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染色家の柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんは100歳を目前にした今も、現役のアーティストとして多くの人々を魅了している。昨年開いた個展には、会期の69日間で3万人超も足を運んだほどだ。国内外の若いクリエーターからコラボレーションのオファーも絶えない。そんな“スーパークリエーター”の魅力に触れたいと、東京・渋谷の自宅を訪ねた。【平林由梨/学芸部】
民芸からインテリアまで
自宅は代々木公園にほど近く、都心とは思えぬ落ち着いた環境。居間の板壁は日に焼けて飴(あめ)色になっていて、仏画家のアンリ・マティスの切り絵や、旅先で買い集めた人形が飾られている。ヨーロッパの巨匠のものから日本の若手デザイナーのものまで画集がずらりと並ぶ。
1922年に現在の東京都北区に生まれた。24歳で岡山県の大原美術館に就職。「民芸運動」を進めた柳宗悦の思想に触れ、染色家の芹沢銈介に師事した。「型染」という技法を核に、服地や着物、帯など実用的なものから空間を飾る一点ものまで、布の持つ可能性を押し広げてきた。70代になってからは絵本の原画も手がけている。2008年にはパリで個展を開催し、好評を博す。「民芸」や「工芸」という枠にとらわれず、インテリアブランドと協働してタペストリーやバッグ、靴下なども手がけ、「丁寧な暮らし」を求める若い世代に響き、ファン層を広げた。
昨年11月、東京都立川市の美術館「PLAY! MUSEUM」で個展を開いたところ、3万人以上が来場した。「来てくれた人たち、みんな元気が出たと言うのね。それは、ぼくはうれしいね」と目を細めた。展示室には色とりどりの布約40枚が揺れ、絵本の原画では動物たちがのびのびと躍動していた。
「柚木さんの作品を見ると元気をもらえるのはなぜでしょうか」と尋ねた。…
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