全国0勝でもJリーガー続々輩出 大阪・興国高の育成法と哲学
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冬の全国高校サッカー選手権では一度も勝ったことがなく、聖地・国立競技場のピッチに立ったこともない。しかしながら、毎年のようにJリーグに人材を送り出して注目を集めているチームがある。大阪市にある興国高校のサッカー部だ。約15年前にわずか12人だった部員は今春、300人の大台を突破するという。夢を追う少年たちが次々に門をたたくサッカー部が掲げるのは「日本一よりもプロを目指す」。高校の「ブカツ」のイメージからはかけ離れた独自の育成法と哲学に迫ろうと、内野智章監督(42)を訪ねた。
ここ10年で27人のJリーガーを輩出
「なにしてんねん」「お前ら終わってるわ」。3月、堺市のグラウンドで行われた練習へ向かうと、ピッチに関西弁の怒号が響き渡っていた。内野監督が1人の選手を呼びつけると、時折、荒っぽい言葉でプレーを選択する時に何をどう考えていたかを問い詰めていた。
内野監督は「うちの試合や練習を見た人は、あの監督、育成とか言っているくせに『めっちゃキレるやん』って思うでしょう。でも、選手たちはわかってくれているはず」と苦笑する。確かに厳しいだけではなく、練習の合間には監督と選手が冗談を言い合って笑いが起きる場面も多く、上下関係が厳しいいわゆる体育会系のノリとはひと味違う。部は大所帯とあって、このトップチーム以下8チームに分け、それぞれが別に活動。昇格、降格を繰り返しながら、競い合っている。
このサッカー部を巣立ったJリーガーは、第1号が出た2013年以降で計27人を数える。現在スコットランドの名門セルティックで活躍する日本代表FW古橋亨梧(きょうご)(27)や、昨季のJ1で新人ながら開幕戦で先発した横浜F・マリノスのMF樺山諒乃介(19)も卒業生だ。体育教諭でもある内野監督は言う。「海外で活躍する選手を育てることが一番の目標です」。ターゲットは高校王者ではない。事実、この冬に100回の節目を迎えた全国高校選手権に、興国の名はなかった。…
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