政権に全面的に協力しながら、野党を名乗るのは理解できない。
国民民主党が衆院に続き、参院でも新年度当初予算に賛成した。もはや閣外からの協力にかじを切ったと言うほかない。
個別の法案や補正予算案なら、野党が賛成するケースも珍しくない。だが、当初予算は全ての施策の裏付けとなる。賛成票を投じることは、政権運営全体を認めたに等しい。
与党との政策協議を定例化するというが、これも問題が多い。
政府提出の法案などは、国会で与野党による開かれた議論を尽くし、必要に応じて修正するのが本来あるべき姿だ。しかし、与党の事前審査で事実上、結論が出てしまっているのが実態である。
政策協議という形で事前審査へ加わることは、国会審議の形骸化に手を貸すことになる。政権監視という野党の役割を果たせない。
接近のきっかけは、国民民主の玉木雄一郎代表が提案したガソリン高対策だ。岸田文雄首相は「あらゆる選択肢を排除しない」として否定せず、3党による「検討チーム」を設置した。
ただ、ガソリン高対策は他の野党も求めてきた。なぜ国民民主だけが、これを理由に予算に賛成したのか。玉木氏が与党に近づく口実に利用しているように映る。
岸田政権の国会運営に支障がない中、自民党が国民民主との協議に応じる背景に、今夏の参院選に向けて野党を分断する狙いがあるのは明白だ。
国民民主は立憲民主党と同様に旧民主党を源流に持つ。自民に代わり政権を担える2大政党制を目指してきたはずだ。
昨年の衆院選は一部選挙区で他の野党と候補者調整を行い、野党陣営の一角だった。半年もたたずに与党に接近するのは、投票した有権者への裏切りではないか。
参院選は32の1人区が全体の勝敗を左右する。野党が候補者を一本化し、自民と1対1の構図を作ることが重要だ。国民民主の姿勢が変わらないのであれば、立憲は関係を見直すべきだろう。
玉木氏は「我々は明確に野党だ」と繰り返すが、実際の行動はその言葉からかけ離れている。野党の立場を忘れ与党にすり寄るようでは、有権者は戸惑うばかりだ。