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通常どれだけでもコピーできるデジタルデータを唯一無二のものとして証明し、複製も改ざんもできなくする「NFT」(非代替性トークン)。昨年、NFTにされた世界初のツイッターのつぶやきが約3億円で落札されるなど話題を呼んだが、どこか「怪しげ」というイメージも拭えない。そんな中、過疎化と高齢化に直面する新潟県長岡市の山古志地域(旧・山古志村)が地方創生にNFTを活用し始めた。「地方創生とデジタル」という意外な組み合わせ。NFTの発行で「できること」を探った。
名産・ニシキゴイを「NFTアート」に
山古志特産のニシキゴイをモチーフに、赤や青など色鮮やかに描いたアート。とはいっても、これは壁にかける絵画ではなく、パソコンやスマートフォン上にある「デジタルアート」だ。山古志住民らで作る「山古志住民会議」が昨年12月以降、仮想通貨(暗号資産)の「イーサリアム」を支払い手段に、1点0・03イーサ(約1万1000円に相当)で販売し、約800人が約1500点を購入した。
こうしたデジタルアートは通常、値段を付けるのが難しい。いくらでもコピーができるため、どんなに優れた作品であっても「タダ」、もしくは極めて少額でしか取引されない。
この壁を崩したのがNFT(Non-Fungible-Token)だ。NFTには作者や作成日などのデータがブロックチェーンと呼ばれる、改ざんできない技術によって書き込まれ、それがコピーではなく「本物」であることを示す。デジタルアートの画像自体はスクリーンショットなどでコピーできるものの、「本物」との見分けがつくため、初めて値段が付けられるようになった。
NFTのもう一つの利点は、所有者が転売した場合にその記録が残ることだ。絵画などのアート作品の作者は多くの場合、最初の販売時の金額しか手にできない。その後、作品が値上がりしたとしても、転売で発生する利益は画廊や収集家らのものになり、作者は誰が新しい所有者なのかも分からなくなる。
これに対し、転売の記録が残るNFTならば、転売時の利益を作者に分配する仕組みにすることも可能だ。山古志住民会議も、ニシキゴイのデジタルアートが転売された場合、その利益の一部を得られるようにし、誰が所有者なのかも追いかけられるようにした。
こうした利点のあるNFT。とはいえ、なぜ、住民会議は発行を思い立ったのだろうか。背景には、山古志が置かれた厳しい現実がある。
NFT購入で「デジタル村民」
山古志は、新潟県のほぼ中央に位置する中山間地。2004年の中越地震で大きな被害を受け、「全村避難」を経験した。地震当時約2200人だった人口のうち、約1600人が山古志に戻ってきたが、現在は約800人まで減…
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