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3月 私のおすすめ 小川公代(英文学者)

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(1)角田光代『タラント』(中央公論新社)

(2)桐野夏生『燕は戻ってこない』(集英社)

(3)高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)

「小さき人々」の声の集積

 誰か他人が使った言葉で話そうとする政治家や知識人が「理念の虜(とりこ)になっていると感じる」といったのはノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチである。理念ではない「自分だけのオリジナルの言葉」で語っているのは「小さき人々」だと、彼女はいう。

 (1)主人公の山辺みのりをはじめ、戦争で片足を失った祖父、不登校になった甥(おい)など、小さき人々の声が生き生きと響いている。みのりは大学時代サークルに入って海外でボランティア活動をしたが、その後ジャーナリストになった宮原玲や写真家になった遠藤翔太とは違い、自分は使命感を欠いているという劣等感を抱いている。だが、祖父の悔しさやパラリンピック選手の持丸涼花らの活躍に鼓舞されるようになる。

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