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5000円給付が「白紙」に もう、バラマキはご免だ

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 あまりにお粗末な展開である。

 年金受給者約2600万人に一律5000円を給付する与党案について、自民党の高市早苗政調会長が「白紙にする」と表明した。参院選目当てとの批判が強まり、見直しに追い込まれた。

 新型コロナウイルス禍に加えて物価も上昇し、国民生活は苦しくなっている。低所得者などへの支援は必要だ。だが、この案は政策の目的も効果も疑問が多い。単なるバラマキに過ぎなかった。

 与党案が浮上してから白紙化に至る経緯も見苦しかった。

 自民、公明両党内で突っ込んだ議論がないまま、幹部だけで政府に提言した。参院選での協力体制を固める足がかりに使いたかったのだろうが、批判的な世論が広がると、今度は与党同士で責任を押し付け合う始末だった。

 迷走したのは、指導力を発揮すべき岸田文雄首相に明確な理念がなかったからではないか。

 提案された直後は「政府としてしっかり対応したい」と前向きな姿勢を示していたが、一転して慎重になった。

 当初から問題は明白だった。生活支援なら、困窮している全ての人を対象にしなければおかしい。一方、年金を受け取っていても余裕がある人はおり、一律給付に合理性はなかった。

 4月から年金が減る分の穴埋めも狙いとされた。だが減額は、将来世代の年金を守るために与党が推進した制度である。

 首相は昨年、子育て世帯への10万円給付を経済対策の目玉に据えた。衆院選で公明が公約したものだ。高所得の家庭も対象となり、生活保障か子育て支援か、政策の目的が分からなくなった。今回と構図が似ている。

 政権が掲げる「分配重視」は、選挙のたびに給付金を配ることなのだろうか。

 今後の対応も気がかりだ。

 首相は物価対策の策定を指示した。参院選が近づくにつれ、与党から財政出動を求める声が強まりかねない。5000円給付案も額を増やしたり、対象を広げたりして再浮上する可能性がある。

 形を変えたバラマキになれば、将来世代につけを回すだけだ。深刻な借金財政の中、無責任にも程がある。

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