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子どもを尊重する社会の実現につなげなければならない。
政府がこども家庭庁の設置を正式決定したことを受け、自民、公明両党が「こども基本法案」をまとめた。
国連の子どもの権利条約に基づき、政府や自治体の政策の基本理念を定める。
立場が弱いため、権利を守るには、支援や保護のための特別な法制度が欠かせない。制定するのは当然だ。
法案は「全てのこども」を対象にしている。日本に住む外国籍の子どもに対する支援の拡充も図らなければならない。
だが、与党案は重要な点が抜け落ちている。
権利が実際に守られているかどうかチェックする第三者機関の設置が盛り込まれなかったことだ。法施行後の検討課題として先送りされた。
第三者機関は行政から独立し、調査や勧告の権限を持つ。権利の侵害が疑われる個別ケースの救済にも当たる。
公明は必要性を主張したが、自民内に、学校や家庭への過度な介入を招きかねないとの慎重論が根強かったという。
しかし、子どもの代弁者として権利擁護を求める第三者機関が必要なのは明らかだ。
実際に、いじめへの対応で、学校や教育委員会が批判されるケースが後を絶たない。親と暮らせない子を保護する児童養護施設の職員が暴力を振るっていた事例もある。社会に、子どもを未熟な存在とみる傾向があるのではないか。
海外では70カ国以上がこうした制度を導入しているという。国内でも30を超える自治体が専門の相談・救済機関を設けている。
気がかりな点は他にもある。与党案の基本理念に「こどもの養育は家庭を基本として行われる」と記されていることだ。
家庭だけでなく、地域や社会全体で成長を支えていく視点がおろそかにされるようなことがあってはならない。
与党は今国会にこの法案を提出し、成立を目指す方針だという。第三者機関の設置を含め、権利の擁護につながる仕組みを整えることが大切だ。画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くことがあってはならない。