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高校教科書の検定 学びの多様性守れるのか

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 子どもの多様な学びの機会を減らすことにならないか。

 新しい学習指導要領に基づき、来年度から高校生が使う教科書の検定結果である。科目が大幅に再編される中、政府方針との整合性をどう取るか、苦心する教科書会社の姿が浮かび上がった。

 たとえば、「日本史探究」や「世界史探究」などにおける近現代史を巡る記述だ。

 戦時中に朝鮮半島の人々を日本で働かせたことを「強制連行」「連行」と表現した箇所に、「政府の統一的な見解に基づいた記述がされていない」と意見がついた。

 政府は昨年4月、こうした表現を「適切ではない」とする国会答弁書を閣議決定した。検定基準は、政府の統一的見解がある場合はそれに基づいて記述するよう定めている。

 大半の社は「動員」や「徴用」に修正して検定を通った。一方で、「多数の朝鮮人を強制連行した」との記述は残し、注釈で閣議決定に触れることで合格したケースもあった。

 歴史認識では他国と意見が異なる場合もある。学校で政府見解しか教えられないようなことになれば、結果として、多様な観点から国際問題への理解を深める機会を失いかねない。

 現代文は、評論や実用文を教材とする「論理国語」と、小説などを扱う「文学国語」に分けられ、選択制となった。

 背景には、現場の指導が文学作品の読解に偏りがちで、実社会で役立つ論理的思考力が身についていないという政府の認識がある。

 だが、教師や専門家には「論理と文学を区別するのはおかしい」との声が根強い。さまざまな読み方が可能な文学作品は、自分なりの解釈を見つける過程で深い思考力も育まれるからだ。

 そのため、「論理国語」で小説を取り上げた社もあった。ただ、主要な教材ではなく、評論に添えた参考資料として認められた。

 子どもが自分で物事を判断できるようになるためには、多角的な視点を養うことが欠かせない。

 最も重要なのは、学びの質を高めることである。その認識を政府と教育現場で共有し、望ましい教科書のあり方を考えなければならない。

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