家を借りられない…生活保護受ける「住宅弱者」の苦悩
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新型コロナウイルスの流行による不況で、仕事を失って家賃を払えなくなったり、会社の寮に住めなくなったりするなど、住まいを失う人たちが少なくない。そうした人たちや単身高齢者、障害者など、住宅を借りづらい「住宅弱者」は、貸す側からすると、家賃の未払いや孤独死などのリスクがあり、貸すことをちゅうちょするという。賃貸住宅を借りるのに苦労した当事者に実情を聞き、支援の在り方を考えた。【道下寛子】
コロナ禍で失業、住居探しに苦労
東京都内の30代女性は、沖縄・石垣島のリゾートホテルで住み込みで清掃の仕事をしていたが、2020年10月、コロナ禍により仕事を失った。
都内の貧困支援を行う団体を頼って東京へ。生活保護を申請して受給し、アパートを探したが、なかなか見つからなかった。団体が探してくれた物件の中から4件を見学。3件は断られ、残りの1件は当初は断られたが、家主らとの話し合いで入居できた。だが、同じアパートに暮らす家主の高齢夫婦は過去に家賃を滞納された経験があったため、家賃に対して厳しかったという。
家主は女性が職を見つけられないことを気にして、たびたび部屋を訪ね「仕事決まったの?」「決まったら教えて」と言ってきた。家賃未払いの不安を払拭(ふっしょく)してもらうため、生活保護の住宅扶助費を福祉事務所から代理納付してもらうことにしたが、その後も、ゴミ出しのたびに「そんなに求人が厳しいの?」などと聞いてくることが約5カ月間続いた。聞かれることが苦しくなり、次第に自宅から出ないようになった。元々患っていたうつ病が悪化し、転居することにした。
「入居可能」は10件に1件
新たなアパートを探すため、不動産仲介業者に行って物件を探してもらったが、生活保護受給者が入居可能な物件は10件に1件程度。業者の担当者には「ほとんど断られてしまいますが、落ち込まないでくださいね」と言われた。担当者が目の前で電話したが、生活保護と伝えると、すぐにやり取りが終わってしまうケースも多かった。結局、2件を見学することができ、そのうちの1件に代理納付を条件に入居できた。
女性は「生活の基盤は家だということに気付きました。そこに安心感を得られないと、安定して仕事などで活動することは厳しいです」と話す。女性は週3日、東京に来る時に助けてくれた支援団体で事務の仕事をし、月に3回、自治体から委託された仕事をしながら、うつ病の治療をしている。「週5回働き、生活保護から抜けて、これまでお世話になった人たちに恩返ししたいです」
「事故物件しか紹介できない」
東京都豊島区の男性(47)は自営業だったが無職となり、20年11月に都内の別の支援団体の施設に入りながら生活保護を受給し始め、アパートを探した。
インターネット検索で、生活保護受給者が入居可能な物件を探した。サイト上で生活保護受給者が「入居可能」と書いてあっても、電話してみると「今はお断りしています」と言われてしまう。「入居可能」となっていることを伝えても「(前の入居者が部屋で死亡した)事故物件しか紹介できない」と返された。
他の物件でも、サイトに家賃4万円と書いてあったが、電話すると「今はそこは借りられない。6万7000円の物件ならある」などと話され、「福祉事務所に住宅扶助費が上乗せできるか聞いてほしい」と言われたという。東京都によると、車椅子を利用するなど、やむを得ない事情がある場合、住宅扶助に上乗せできる特別基準がある。だが男性は、自分の場合は該当しないと考えて諦めた。
これら2件も含め、ネットでは生活保護受給者が入居可能な物件を5カ所見つけたが、全て部屋を見学できなかった。
百数十件のうち内覧可能は十数件
その後、支援団体から、住宅弱者の家探しをするコンサルタント会社「Well-being.Tokyo」を営む柿本志信さん(51)を紹介された。
柿本さんは男性の物件を探す上で、百数十件の物件について、生活保護受給者の入居が可能か連絡したが、そのうち内覧が可能だったのは十数件だったという。その中から、今のアパートに入居することができた。
男性は「しょうがないのかな、と半分は分かっています。(家主や不動産会社からすると)面倒なことになりそうな人よりは、普通の人を取りたいのは分かります。でも、住むところが決まらないのはつらい。私は支援団体とつながっていたから良かったの…
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