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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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苦戦するロシア軍、続く情報機関の内部告発 その信ぴょう性は

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放置されたロシア軍の戦車に歩み寄るウクライナ兵=ウクライナ東部アンドリーフカで2022年4月5日、AP
放置されたロシア軍の戦車に歩み寄るウクライナ兵=ウクライナ東部アンドリーフカで2022年4月5日、AP

 ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、ロシアの情報・治安機関、連邦保安庁(FSB)からの「内部告発」とされる手紙をロシアの人権活動家が公表し続けている。侵攻を巡るロシアの軍・治安機関内部の動揺がつづられているほか、ロシアのプーチン政権内で昨夏に日本との武力衝突の可能性が検討されていたという驚きの内容も含まれている。この「告発」はどこまで信用できるのか。

 「現在の戦力でこのような前線を維持するのは不可能だ」「指導部の理想は5月9日(対独戦勝記念日)までに何らかの勝利を提示することだ。だから前線の縮小と有望な方面への戦力の集中が進んでいる」

 3月30日付のFSBからの内部告発とされる手紙には、露軍が首都キーウ(キエフ)周辺などで部隊を撤収し、東部のドネツク、ルガンスク両州などに部隊を再配置する動きについて、そのような見方を示した。米CNNも今月3日、米当局者の話として、プーチン政権が重視する第二次大戦の対独戦勝記念日に合わせて何らかの勝利宣言をする可能性を報じている。

符合する手紙の内容と戦況

 手紙の公開を続けているのは、ロシアの刑務所などでの拷問について調査を続ける人権団体「グラーグ・ネット」代表のウラジーミル・オセチキン氏(40)。自身も拘留経験があり、今はフランスで亡命生活を送りながら、ロシアの治安機関による人権侵害や汚職などを告発してきた。

 毎日新聞のオンライン取材に応じたオセチキン氏によると、「FSBの将校グループ」を名乗る匿名のメールが届き始めたのは2021年10月だった。当初は「重要視していなかった」というが、侵攻直前の今年2月19日、ウクライナの拘留施設で拷問が行われているという「偽情報」が出回るとの警告を受け、見方が変わった。実際、2日後に拷問を装った不自然な映像やウクライナの拘留施設での暴動の呼びかけなどが届き、「情報の正しさが裏付けられた」からだ。

 ウクライナへの侵攻が始まると、短期の首都制圧を狙った「電撃戦」が失敗したことや政権内で侵攻の情報が隠され、十分な準備ができていなかったことなどの内実を描く手紙も届くようになった。オセチキン氏がこの手紙をフェイスブックに投稿すると、ネット上に拡散し、英訳もされて世界中のメディアが取り上げるようになったという。

 これまでに「内部告発者」から届いた手紙は15~20通。その中で強調されるのは独裁的な権力を持つ指導者の下にある政権内の揺らぎだ。「報告書は上司によって政治的に正しく書き換えられ、バラ色の、つまり誤った光景が作り出されることになる」「体系的な仕事はどこでも潰され、上層部は何が起きているか、何をする必要があるか、きちんと把握できていない」

破局を避ける狙いか

 オセチキン氏は内部告発の背景について、戦況が悪化する中で「軍はFSBに責任を押しつけようとし、FSB内部でもいくつかのグループが競い合っている」と政権内で対立が起きている可能性を指摘する。一方で「内部告発者」はオセチキン氏に対し、「破局が待ち受ける中、我々は人的損失を最小化しようとしている」と述べ、告発を通して侵攻による犠牲が拡大するのを防ごうとしているともみられるという。

 「内部告発者」は戦況や経済状況の悪化の中、ロシアが「春の終わりから初夏にかけて危機的な状況」を迎えるとの見解を表明。オセチキン氏は政権内で「愛国的な抗議」が起こり、上層部を打倒する動きが…

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【ウクライナ侵攻】

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