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ウクライナで大規模な民間人殺害が明らかになり、国際秩序を支えるべき大国の責任が改めて問われている。
中国の姿勢は、ロシアによる侵攻から1カ月以上過ぎた今も曖昧なままだ。
「主権と領土の一体性」の尊重を訴えながら、対露非難は避けている。先月末にはロシア外相を招いて「戦略的な連携強化」で一致した。国連人権理事会からロシアを締め出す決議に反対した。
人道危機が深刻化すると、習近平国家主席は「非常に遺憾だ」と述べ、ウクライナに配慮する姿勢を示した。対話による解決の必要性も繰り返し強調している。
だが、具体的な行動は伴っていない。ウクライナは停戦協議の中で、自国の安全を担保する国際的枠組みの構成メンバーに中国を挙げている。だが、習指導部は模様眺めを続けている。
行動がちぐはぐに見えるのは、米国との覇権争いを最重要視しているからだろう。対米共闘のパートナーであるロシアを見捨てるわけにはいかない。同時に、欧州との関係を維持し、米欧が一致して中国に対峙(たいじ)する事態は避けたい。
中国は米国を批判する一方で、欧州連合(EU)や独仏へは首脳外交を展開している。経済関係の重要性を訴えて逆風をかわそうという思惑がうかがえる。
だが、人道危機を目の前にして、見て見ぬふりをする利己的な態度では国際社会の信頼を得られない。「中国はウクライナ問題について話し合う気がない」。EUからは厳しい声が上がる。
新興・途上国を取り込もうとする動きからも、米国への対抗意識が見て取れる。対露経済制裁に消極的なインドなどの国々と接触を重ね、自国の立場を強固にしようとしている。
確かに、大国間の板挟みに苦慮する途上国は少なくないだろう。それでも、国連総会の緊急特別会合では、ロシアの責任を問う決議が2度にわたって圧倒的多数で採択された。国の大きさや政治的な立場の違いを超えて示された意思は非常に重い。
中国は「国連中心の秩序」を掲げてきたはずだ。ロシアへの国際的な圧力を弱めるような言動は、大国としてふさわしくない。