「全員顧問」「全員加入」 教師と生徒悩ます部活の「当たり前」
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部活動は「学校教育」の一環とされ、日本社会に根付いてきた。ただ、教員の長時間労働の一因ともなり、教育現場からは改善を求める声が上がる。少子化で学校の小規模化も進んだために、従来の活動が成り立たなくもなってきた。危機にある部活の現状に迫る。
過酷な労働環境とともに悩ましい問題が「全員顧問制」だ。関西地方の公立中学校で、2021年度まで運動部の副顧問を務めていた30代の男性教員は「部活動の現状は、どう考えてもおかしい」と疑問を呈する。
放課後に約2時間の練習を指導した後、授業の準備などで退勤が午後9時を回ることはざらだ。土日も朝練で出勤し、対外試合が入れば、引率と審判の両役を担う。帰宅はだいたい夕方だ。昨年のある月の勤務記録を見返すと、残業時間は100時間を超えていた。
文部科学省が16年度に実施した調査では、公立の小学校教員の約3割、中学校教員の約6割が過労死ラインとされる「月80時間以上」の残業をしていた。
教職員給与特別措置法に基づき、公立校の教員は月額給与の4%を「教職調整額」として上乗せ支給される代わりに、残業代が支払われない仕組みがある。部活指導も自発的な活動とみなされ、教員の長時間労働の要因となっている。
この男性教員の勤務校では多くの学校と同様に全教員が顧問になる慣習があり、陸上や球技など毎年違う部活動を担当。年度初めは、通勤電車でスマートフォンを手に試合の動画を見たり、解説本を読んだりして競技の基礎を学ぶ。若手教員の間で「部活はいらない」という会話も出るが、「職場全体では『やるのが当たり前』という空気がある」。新年度から休日負担を減らすよう校長に願い出た結果、文化部の顧問になった。
スポーツ庁は18年3月、教員の働き方改革を念頭に、主に中学での部活の上限時間を平日は2時間、休日は3時間とし、1週間の休養日を計2日以上(土日のいずれかを含む)とするガイドラインを全国に通知。文化庁も同年12月、文化部を対象としたガイドラインに同様の記述を盛り込んだ。
これらを受け、学校職員として教員に代わり顧問を務める「部活動指導員」の活用や、民間クラブとの連携など教員の負担軽減を図る動きも出ているが、実態はなかなか変わらない。
部活の問題に取り組む教職員組合も発足した。「愛知部活動問題レジスタンス」は…
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