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映画監督や有名俳優から性暴力を受けたとの女性の告発が相次いでいる。監督作品の公開が中止されるなど影響が広がる。
業界全体で深刻に受け止めるべき事態だ。個人の問題として済ませてはならない。
内部からも是正を求める意見が出ている。是枝裕和氏や諏訪敦彦氏ら監督有志は「監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対する」との声明を出した。
「残念ながらはるか以前から繰り返されてきた」とも指摘する。背景にあるのは構造的な問題だ。
映画を支える俳優やスタッフはフリーランスが多い。仕事を発注する側であるプロデューサーや、監督は圧倒的に優位だ。テレビ界や演劇界にも同じ構造がある。
業界内の地位を乱用した暴力や威圧的な言動は許されない。
米国では2017年、配役に関する会合と称して女優を呼び、性行為を強要するなどしたハリウッドの大物プロデューサーが告発された。それをきっかけに、性暴力を排除する運動が始まった。
韓国でも著名な詩人や映画監督、舞台演出家が糾弾された。だが、日本で動きは広がらなかった。
少数派が声を上げることは難しい。勇気を出して告発しても、中傷されたり、業界から干されたりするリスクがあるからだ。
映画業界の中枢は男性が大半を占めている。
非営利団体「Japanese Film Project」の調査によると、00~20年に公開された興行収入10億円以上の実写邦画のうち女性監督の割合は3%にすぎない。
被害を防ぐには、当事者がためらわずに声を上げられる仕組みを作ることが必要だ。
訴えやすくするため、業界として相談窓口を設け、ハラスメント防止策を確立することが急務だ。
映画やテレビドラマの現場、劇団などでは防止のための研修を実施しているケースもある。
文化庁や経済産業省は、口頭ではなく、労働条件を明記した書面による契約を求めるなど、フリーランスが安心して働ける環境の整備を促している。
古い体質のままでは優れた才能が集まらず、芸能界の発展は望めない。業界挙げての意識改革が求められる。