そこにしかない地方の「個性」 古里で暮らす作家・あさのあつこさん
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東京一極集中や都市と地方の格差が叫ばれる中、人々の暮らしが見直されている。自らの感性で作品を生み出し、発表する映画監督や作家、写真家にも、地方で暮らす人がいる。商業や流通の拠点である東京ではなく地方を選んだ表現者の目には何が映っているのだろう。「脱成長」など新たなキーワードがじわじわと広がり、コロナ禍で地方移住が注目される今、3人が暮らす街を訪ねた。【松室花実】
雄大な山々と清流に囲まれた岡山県北部、美作(みまさか)市の湯郷(ゆのごう)温泉街。ベストセラー小説「バッテリー」などで知られる作家のあさのあつこさんは、生まれ育ったこの地で作品を生み出し続けている。
作家目指し、大学進学で上京
中学生の頃から作家を目指し、大学進学のため上京した。「あの頃の東京はエネルギーに満ちあふれていた」と振り返る。卒業後、岡山市の小学校教員となり、結婚を機に古里に戻った。子育てに追われる日々でも「書きたい」という思いは消えず、37歳でデビュー。数々の文学賞を受賞した。
野球少年たちの心情を描き、映画化もされた「バッテリー」を始め、地元の風景が作品の舞台になることは多い。「物語を書くのは五感を文章化すること。私をまとう空気感はこの地で醸し出されてきたから、ここじゃないと書けない。田起こしした土の匂いや地元の人が話す方言……。この情景が全て書くことの基になっています」
コロナで社会のもろさ、目の当たり
ここ数年、飲食業界や非正規で働く人などを中心に当たり前の生活があっけなく崩れる様子を目の当たりにした。「人…
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