心優しき女王・小平奈緒 寄り添い、リンクと「対話」したスケート人生
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求道者、情熱、真摯(しんし)――。12日に10月の全日本距離別選手権をラストレースとして引退する意向を表明したスピードスケート女子の小平奈緒(35)=相沢病院=はかつて、自らを表現する言葉を問われ、そう口にした。究極の滑りを求めて一切の妥協を許さない半面、周囲を気遣い、寄り添う姿勢は頂点へと上り詰めても変わらなかった。
2018年平昌オリンピック女子500メートルで、五輪新記録(36秒94)をマークした小平は握った拳をほどくと、右手の人さし指を口に当てた。快記録に沸き立った会場は静まりかえった。次の組に登場したのは地元・韓国のスター、李相花(イサンファ)(33)。李は小平の記録を上回れず、五輪3連覇を逃した。滑り終えた直後、ショックを隠せない李に対し、小平はそっと寄り添い、肩を抱き寄せた。
10代後半からしのぎを削ってきた2人は良きライバルであり、親友でもあった。今も語り継がれるシーンについて、小平は「あれは私たちにとって自然なもの」と振り返り、李は「奈緒には『本当に尊敬しているよ』と伝えたかった」と、その瞬間に思いをはせた。
平昌五輪までは李が小平の成績を上回ってきた。レース後、李が敗れた小平をねぎらうことも多かったという。「彼女(李)から力をもらって、次のステップに進めた」と語る小平にとって、抱擁は「自然」なことだった。
「日々の支えがあって滑ることができる」
強く、優しい小平の心は晩成型といえる競技人生で育まれた。…
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