ウクライナ侵攻、スマホで見る現代戦の本質 福田充・日大教授
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世界中の人が手元にあるスマートフォンで戦場を見るなど、ロシアによるウクライナ侵攻はこれまでにない戦争となっている。インテリジェンス(機密情報活動)問題に詳しい日本大危機管理学部の福田充教授は「フェイクニュースが重要な兵器になった」とも語る。現代の戦争はかつてとどう違うのか、台湾侵攻も懸念される中国はどう見ているか、多面的に読み解いてもらった。【聞き手・宇田川恵】
機密情報の公開という賭けに出た米国
――ロシアの侵攻前から米国のバイデン大統領は衛星画像など国家の機密情報を積極的に公開しました。この動きをどう見ましたか。
◆米中央情報局(CIA)など世界各国のインテリジェンス機関は昔から、情報収集活動を行っている。伝統的なやり方であるスパイ活動のほか、電話や電子メールなどの通信傍受、軍事衛星や監視カメラの画像を使った活動などさまざまだ。集めた機密情報は、自国の防衛やテロ対策など政策に生かすことが目的であり、秘匿することが大前提となる。開示するために収集しているわけではないからだ。
その機密情報を米国がこれほど積極的に公開したというのは前例のないことだ。この米国の「インテリジェンス公開戦略」はロシアの行動を掌握していると示すことで、侵攻を思いとどまらせる狙いだった。ただ、米国にとっても結果がどう出るかは分からず、大きな賭けだったと思う。
――ロシアは侵攻を強行し、米国の戦略は失敗したかに見えます。しかし侵攻後、国際世論は高まりました。
◆世界の目がこれだけウクライナに集まっているのは、ロシアが侵攻したという事実そのものではなく、侵攻したという事実を知ったからだ。その事実を知らしめた大きなカギが、米国が公開した機密情報だった。情報がなければ、多くの人は侵攻という事実をよく理解できなかったかもしれないし、「違法な戦争ではない」というロシア側の言い分を信じてしまった可能性もある。米国の戦略はウクライナに世界の関心を引きつけ、世界がロシアを非難し孤立させる効果をもったという意味では成功している。
フェイクニュースが重要な兵器に
――近年の戦争は「ハイブリッド戦争」と呼ばれます。
◆軍事力などハードパワーだけでなく、情報力などソフトパワーを組み合わせた戦争がハイブリッド戦だ。インターネットやSNS(ネット交流サービス)が普及した現代、特に情報戦という側面が注目されている。ただ、第二次世界大戦でナチス・ドイツがラジオや映画を徹底的にプロパガンダに利用したり、米国がディズニー映画を宣伝に使ったりと、かなり以前からハイブリッド戦は展開されていた。
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