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ぶんかのミカタ

ある文化的なテーマを上・下に分けて解き明かします。

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ぶんかのミカタ

ローカルに根ざして/上 衰退引き受けつつ、土地を表現=画家・岩名泰岳

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正月堂修正会に参加する筆者(左から4人目)ら<蜜ノ木>のメンバー=三重県伊賀市で2022年2月11日撮影(<蜜ノ木>提供)
正月堂修正会に参加する筆者(左から4人目)ら<蜜ノ木>のメンバー=三重県伊賀市で2022年2月11日撮影(<蜜ノ木>提供)

 三重県伊賀市島ケ原地区という人口2000人ほどの山間集落でわたしは10歳から育った。かつてこの土地は「島ケ原村」と呼ばれるれっきとした村だったが、2004年の市町村合併によって消滅した。それは災害や戦争による衝撃的な消滅ではなく、日々の暮らしの中で徐々に人が減り、若者がまちへ行き、空き家が増え、郷土資料館の年表の更新が途絶えるというような静かな崩壊だった。

 「もうすぐうちの村も合併してなくなる」。そんなうわさが集落に広がりはじめたのは中学3年生のときだった。この頃学校の図書室でマルク・シャガール(1887~1985年)の古い画集を見つけた。画家の故郷の村(現在のベラルーシ)を描いた初期の油彩画にひきつけられた。「もし村がなくなっても、いつか自分で油絵の具を買って、この場所の風景やここにいるみんなのことを自分なりの形で絵に残そう」。そんなことを思いな…

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