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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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池上彰のこれ聞いていいですか?

福島は新しいビジネス考えるとき カンニング竹山さん旅して動いて

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「福島と長く触れあっていきたいから、ぶらり旅を始めました」。お笑い芸人のカンニング竹山さんはそう話す=東京都千代田区で2022年4月12日、幾島健太郎撮影
「福島と長く触れあっていきたいから、ぶらり旅を始めました」。お笑い芸人のカンニング竹山さんはそう話す=東京都千代田区で2022年4月12日、幾島健太郎撮影

 東日本大震災で東京電力福島第1原発事故が起きてから、福島とどう向き合っていいのかが分からない人が増えている、と感じていた。それならば、とお笑い芸人のカンニング竹山さんは福島を何度も訪れた。ボランティアではなく観光で県内を回り、今では回数が分からないほどのリピーターに。ジャーナリストの池上彰さんとの初めての対談では「日帰りぶらり旅」の魅力や、福島でやりたいことなどについて語り合った。【構成・瀬尾忠義】

現場に行って分かってくる

 池上 福島を取り上げた本は、原発事故や復興の進捗(しんちょく)具合といったテーマが多いと思います。その中で竹山さんが書かれた「福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねえかよ!」は、UFOふれあい館(福島市)などの観光施設を紹介した上で「面白くない」「こんなのはどうだ?」といった突っ込みを入れています。ニュートラルに福島を見た内容で、こういう書き方もあるのかと驚きました。被災地に遊びに行くのは不謹慎だと思ってしまいますが、観光で訪れて楽しめばいいんだと知らしめてくれた気がします。

 竹山 みなさん、福島に気を使われている部分があります。特に原発事故後は、余計にどうしたらいいか分からない人が大勢いるでしょう。僕は、震災から数カ月後に取材で福島に入りました。原発事故の影響が大きくて現地を見て回るうちにこれは2、3年で終わる話ではないぞ、と考え始めました。もしかしたら100年といった長期スパンで、地元と触れあっていくしかないのではと思ったのです。

 それならば、自分のキャリアを生かすにはどうしたらいいのか? 「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)などでロケをやっていますから、カメラがないロケとしてブラブラ歩けばいい、と。そう考えて福島の旅をスタートさせました。

 池上 訪れた先々で、地元の人が気軽に声をかけてくれるでしょう。

 竹山 観光ならば自分も楽しいですし、お金を地元に落とすことで喜んでもらえます。そして、その土地での友達ができます。SNS(ネット交流サービス)で現地で撮影した写真を発信した時、避難した住民の方から「私が住んでいた街の階段です」といった反応がありました。そのようなことが続くうちに、自分がやっていることに影響力がなくても、福島に行ってみたいと思ってくれる人が1人でも2人でも増えたらいいのではないかと考えました。

 池上 福島といったらラーメンがおいしいことや、温泉が多いことはすぐに思い浮かびますが、ギョーザも名物なんですね。

 竹山 結構、お店がありますね。旧満州(現中国東北部)から引き揚げてきた方が始めたというルーツは、宇都宮などと一緒だと地元の方からお聞きしました。個人的には、ある店の塩ラーメンにはまっています。中途半端にしか福島を知らなかったからこそ、地元の味に素直に感動できるのかもしれません。

 池上 福島で野菜を買ったと、SNSで発信したら「炎上」しました。

 竹山 県内を観光で回り始めた頃のことです。あるスーパーに入ると、地元応援野菜コーナーがありました。買えば応援になるし、しかも安い。それをツイッターに書き込んだら「大炎上」しました。「放射能をばらまいているものを宣伝しているのか!」といった批判する内容ばかり。今振り返ると、あの頃は原発に関する知識は僕を含めてありませんでしたし、情報が錯綜(さくそう)していたから、みんなが敏感に反応したのでしょう。

 池上 今「福島の野菜は怖い」とSNSなどで発信したらそれこそ「炎上」してしまうでしょうね。世論も変わってきています。

 竹山 みんなが正しい情報を分かってきたことが大きいと思います。

 池上 それでも原発を話題に取り上げると、すぐに「賛成」「反対」を主張し合い感情論になります。

 竹山 本当にそうですね。僕は原発関係者からも話をうかがったので、エネルギー問題を自分なりに考えました。また、福島原発はなぜここにできたのか、福島だけではなく、日本各地に原発ができたプロセスが分かるようになりました。

 住民の方と話をすることで、事故処理には裏と表の部分があることが見えてきますし、人間くさい出来事も耳にしました。現場に行って、見て、地元の人としゃべる。そうして分かってくることがあるので、福島にひかれるのかもしれません。

 福島を訪れる前は、強制避難となった土地は東電が買い取って、処分場を造ったり観光化に向けて整備したりしたほうがいいと思っていました。でも、避難している高齢の女性と話をした時に「生まれたところで死にたい。だから古里に帰りたい」と打ち明けられました。正直、僕の年齢ではその感覚はなかった。でも、人生が終わりに近づいた年齢になればと想像すると、その気持ちが確かに分かる。衝撃でした。だから「帰ってもらわないといけない」とも考えるようになりました。現場に行ってこその学びがあります。

福島にもっと人を運びたい

 池上 福島の魅力にすっかりはまっているようですが、これからも通うことになりますか…

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【東日本大震災】

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