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衆院憲法審査会で、大規模災害などが起きた際に国会議員の任期延長を可能にする緊急事態条項を巡る議論が活発になっている。
憲法は衆院議員の任期を4年、参院議員を6年と定める。不測の事態で改選されなければ、衆院は議員不在となる。
自民党は「任期延長によって国会の機能を維持する」という理屈で、憲法改正を訴えている。公明、日本維新の会、国民民主の3党も同調する。
立憲民主党などは異を唱えているが、自民は「おおむね共通の理解が得られた」と強弁し、議論を先に進めようとしている。
世論の反発をかわしやすい任期延長を突破口に憲法に緊急事態条項を設け、政府の権限強化につなげたい思惑が透けて見える。
緊急事態条項は、三権分立や基本的人権の尊重など憲法の原則を一時的に停止・制限するものだ。
自民の改憲案には、緊急時であれば内閣が国会審議を経ることなく、法律と同じ効力の政令を出せる規定も盛り込まれている。
迅速な対応の必要性を強調して政府への白紙委任に道を開くような改正には、与党の公明でさえ慎重だ。
「緊急事態」を誰が認定するかも問題だ。自民は首相もしくは内閣が判断し、国会が承認する案を示している。だが、任期延長が恣意(しい)的に運用されれば、政権の延命に利用される懸念がある。
緊急事態条項の新設を前面に打ち出した改憲論は、東日本大震災後に自民が提唱した。新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻に便乗する形で推進しようとしている。
しかし、国会を軽視してきた自民が「国会の機能維持」を持ち出すのは、ご都合主義と言うほかない。安倍・菅政権は野党の臨時国会召集の求めに応じず、質問に正面から答えない対応が続いた。
国会のあり方については、オンライン審議を可能とする検討が始まっている。緊急時にこそ活用できるのではないか。
まずなすべきなのは、大震災やコロナ禍の対応に際し、現行法の枠組みで重大な支障があったのかを検証することだ。
改憲ありきで拙速に議論を進めてはならない。