吉野家発言に潜む「男性中心社会」 「受け狙い」で人権意識欠落
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牛丼チェーン大手「吉野家」の元常務取締役(18日付で解任)が大学の社会人向け講座で、若い女性に牛丼を好きになってもらう方法について「生娘をシャブ漬け戦略」などと表現した問題が波紋を広げている。有名企業の役員から飛び出した耳を疑う暴言。広告業界で働き、SNS(ネット交流サービス)で活躍するフェミニストの笛美さんは「男性中心社会」が生み出した女性蔑視だと批判し、「マーケティングは人権の視点が弱くなりがち」とも語る。どういうことなのか。じっくり話を聞いた。【野口由紀】
――発言についてどう感じましたか?
◆こういうこと言う人いるな、あー、やっちゃったなと思いました。「シャブ漬け」までは言わないですが、似たようなことを言う人が社内外にいるなとは思いました。マーケティングのプレゼンではわかりやすく伝えるための例え話として、女性蔑視の発言をする人が結構います。その方が「受ける」からです。吉野家の元常務は若い女性をターゲットにしていることもあって、そういうことを言いたくなっちゃったんだろうなと思いました。
ホモソーシャルな価値観
――問題点はどこにあると思いますか?
◆女性を蔑視しているところです。若い女性を意思ある人間ではなくだまされて利用されるモノのように捉えています。それを皆の前で「受ける」と思って披露してしまったのでしょう。「生娘シャブ漬け」という発言は、男性中心の、男性同士の絆を重視するホモソーシャル(な社会)では「俺はこんなふうに女性を悪く扱える悪い男なんだ」と笑いが取れる発言だったんだと思います。「男に高い飯をおごってもらうようになれば(牛丼を)絶対に食べない」という元常務の発言も、男女の賃金格差を問題視せず、ジェンダー格差の固定化につながってしまうと懸念します。
顧客をバカにしてしまったことも深刻です。マーケティング業界を知る人間として思うのは、マーケティングは消費者に「○○させる」などと働きかけることを考える仕事のため、自分は人を操る「神」であるかのように思い、ちょっと人をバカにする視線を持ちがちなのだと思います。顧客を主体ではなく客体として見て、「上から目線」になってしまいがちです。皆が皆そうではないですが、そういう土壌はあると思います。
――女性を顧客にするための戦略なのに、なぜ蔑視になってしまうのでしょうか?
◆その人たちが元々持っていた女性蔑視(の価値観)があり、女性が顧客になっても、それがなくならないんだと思います。例えば「主婦だとあんまり難しいことはわからない」などの偏見があるのではないかと感じます。最近では柔軟剤の…
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