日本の食料安全保障の真相 「台湾有事で日本人の半数は餓死」?

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キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹
キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹

 「食料安全保障」に注目が集まっている。ロシアのウクライナ侵攻で穀物価格が高騰し、新型コロナウイルス禍で食品の物流網が混乱している。食料や農業問題に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「もし台湾有事となれば、日本人の半数が餓死する可能性だってある」と指摘。「日本の食料安全保障を危機に陥れているのは農政だ」と訴える。【聞き手・宇田川恵】

ウクライナ侵攻の影響は限定的だが…

 ――ロシアのウクライナ侵攻は日本の食に影響しますか。

 ◆ウクライナやロシアは小麦の主要産地であり、輸出がストップすれば世界的に小麦価格が上がり、他の穀物にも影響する。ただ、両地域の小麦の品質は高いとはいえず、価格も安価なので、主に中東や北アフリカ向けに輸出されている。こうした地域の所得の低い人たちは主食の小麦が買えなくなる。すでに一部で混乱が起きているが、飢餓を含め、大変な影響が出るだろう。

 しかし、日本への影響は限定的だ。日本が主に輸入しているのは米国やカナダなど政情が安定した先進国で生産された高い品質の小麦だ。また、価格が数倍に上がったとしても食料品全体の物価に与える影響は少ない。それは食料品支出全体に占める輸入小麦などの農産物の割合がほんの一部だからだ。さらに、パンの値段が上がっても、米などで代替もできる。1970年代の「オイルショック」のような苦境になるかもしれない、と不安をあおる声が出ているが、落ち着いて対応すべきだ。

「主食を減産するとは何ごとか」

 ――世界が食料問題に敏感になり、食料安全保障への関心が高まっています。

 ◆食料危機はどんな場合に起こるかというと二つある。一つは金がなくて買えない時、もう一つは金があっても物がなくて買えない時だ。ウクライナ産小麦の輸出先の北アフリカなどが混乱しているのは、一つ目のケースに当たる。日本の場合、途上国並みの経済状態に陥らない限り、この心配はほぼない。問題は物がなくなる時だ。

 今、中国による台湾侵攻の可能性が指摘されている。もし台湾有事となれば、台湾海峡だけでなく、もっと広範囲に影響が及び、日本のシーレーン(海上交通路)が破壊される可能性がある。輸入は完全にストップし、在庫もなくなり、とんでもない食料危機になるかもしれない。そうなったら国産のものを食べるしかないが、ほぼ100%国産の穀物は米だけだ。

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