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4月 私のおすすめ 大塚真祐子(書店員)

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(1)川上未映子『春のこわいもの』(新潮社)

(2)ルシア・ベルリン著、岸本佐知子訳『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集』(講談社)

(3)ペリーヌ・ル・ケレック著、相川千尋訳『真っ赤な口紅をぬって』(新泉社)

影に潜む「一人の女の子」たち

 <いつも一人の女の子のことを書こうと思っている>と漫画家の岡崎京子はかつてエッセーにそう記した。事故による休筆のさなかにあるが、あのとき漫画家が書こうとした無数の「一人の女の子」たちが、いまもさまざまな物語の影に潜んでいる気がする。

 (1)は感染症が大流行する直前の、不穏な予感に満ちた東京に暮らす六人の男女を描いた作品集。年齢や境遇の異なる人びとが一貫してパンデミック前夜にいること、のちに一変する世界で二度と交わることができないかもしれないということを、わたしたち読者は知っている。それに気づいたとき、物語のなかで露(あら)わにされた登場人物たちの欲望や怨恨(えんこん)が、自分の内にある醜い感情をもまざまざと映し出し、いつしか…

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