「夢の原子炉」もんじゅ消滅で敷地片隅に新研究炉 地元は温度差

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
廃炉中の高速増殖原型炉もんじゅ。この山側で試験研究炉の建設計画がある=福井県敦賀市白木で2021年10月6日午後2時2分、大島秀利撮影
廃炉中の高速増殖原型炉もんじゅ。この山側で試験研究炉の建設計画がある=福井県敦賀市白木で2021年10月6日午後2時2分、大島秀利撮影

 原発で使った核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の中核施設とされながら、相次ぐトラブルや不祥事で廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。その敷地の片隅に、新しい試験研究炉をつくる計画が進んでいる。どんな原子炉なのだろうか。

 日本海に突き出た敦賀半島。日本原子力発電の敦賀原発や、関西電力の美浜原発など、計画中や廃炉中も含め9基の原発が集中立地する「原発銀座」だ。その北西の端に、もんじゅがある。

 記者は2021年10月、候補地を訪ねた。もんじゅの巨大な原子炉建物(高さ約80メートル)を見下ろす展望所を過ぎ、背後の山のヘアピンカーブを上ると、海抜約130メートルの候補地にたどり着いた。かつて資材置き場があった場所だという。現地では、深さ200メートルのボーリング調査が行われていた。日本原子力研究開発機構は22年3月、敷地直下の地質に大きな問題はなかったと報告した。

 もんじゅは、使った以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」と期待されたが、ナトリウム漏れ事故や多数の機器の点検漏れを起こし、ほとんど稼働できないまま16年に廃炉が決まった。政府はもんじゅの敷地を活用し、原子力の研究や人材育成の拠点と、廃炉後の地元振興を兼ね、試験研究炉をつくる方針を打ち出した。

モデルは「JRR3」

 文部科学省や原子力機構、京都大、福井大などでつくる「コンソーシアム(共同事業体)委員会」が設計や運営方法などを検討している。それによると、試験研究炉は発電をせず、熱出力1万キロワット未満の「中出力」とする方針だ。熱出力71・4万キロワットで発電もできるもんじゅと比べれば、かなり小規模になる。

 試験研究炉では、原子炉で中性子ビームをつくり、物質の構造を解析したり、医療用の放射性物質(RI)をつくったりする。モデルにするのが、茨城県東海村にある原子力機構の「JRR3」だ。1962年に稼働した初の国産研究炉で、熱出力2万キロワット。冷却に水を使い、ウランとケイ素を混ぜた燃料を使う。冷却にナトリウム、燃料にウランとプルトニウムを使うもんじゅとは全く違う原子炉で、原子力機構は「もんじゅの後継とは考えていない」と説明する。

 JRR3はすでに原子力規制委員会の審査に合格し、21年2月に約10年3カ月ぶりに運転を再開した。これと似た設計にすれば、たとえ新設の原子炉であっても規制委の審査に合格しやすい、という目算もある。

 西日本では、64年に運転を始めた京大の研究炉「KUR」(熱出力5000キロワット、大阪府熊取町)が共同利用されてきた。しかし、米国の研究施設が受け入れていた使用済み核燃料の引き取りに期限があることなどを考慮し、26年5月に運転を終えることが決まった。

 国内の研究炉は多くが運転開始から50年以上たち、老朽化が進んでいる。新たな研究拠…

この記事は有料記事です。

残り747文字(全文1921文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集