「利子、担保不要」ゼロゼロ融資 「56兆円」が刻んだ功罪
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新型コロナウイルス禍で逆風にさらされた中小企業を支えるため、政府は実質無利子・無担保でお金を貸し出す「ゼロゼロ融資」という異例の政策に打って出た。ゼロゼロを中心とするコロナ対応融資の貸出総額は56兆円を超え、売り上げが急減した事業者にとって命綱となったのは間違いない。ただ、既に新規融資はピークを過ぎ、入れ替わるように元本返済が本格化している。「56兆円」が日本経済に刻んだ功罪を追った。
「またとない機会」中小事業者に恩恵
大阪で民泊業を営む男性は2020年夏、日本政策金融公庫から「数百万円」をゼロゼロ融資で借りた。「無利子、無担保で融資が受けられる機会なんて、めったにない。借りられるだけ借りようと動きましたよ」。同年秋にも追加融資を受け、これを原資にコロナ禍による民泊利用者の激減を何とか乗り切った。
昨年から、ゼロゼロ融資の返済が本格化した。返済額は月20万円弱。いまだ客足が戻らない中、重い負担だ。男性の場合、民泊に加え、賃貸物件の家賃収入もあったため何とか返済できているが、同業者の中には返済に行き詰まり、廃業を選ぶケースも出始めた。
「金融機関に新たな借り入れを求めたが、断られた」。最近、こんな話もよく耳にする。「どうやら助ける事業者と、潰れそうな事業者の選別が始まったようだ」。男性の実感だ。
「ゼロゼロ融資」の仕組みは?
ゼロゼロ融資は、利子を各都道府県が、返済不能となった場合の焦げ付きリスクを信用保証協会が受け持つことで、おカネを借りる企業の利子、担保負担を「ゼロ」にする制度だ。政府が都道府県、信用保証協会を財政面で裏付けている。
融資上限は6000万円、利子の猶予期間は最大3年間。政策を主導した政府関係者は「金融機関に積極融資を要請した結果、国内のほとんどの中小企業にゼロゼロ融資が行き渡ったはずだ」と胸を張る。
「もろ刃の剣」の危険も
効果は絶大だ。東京商工リサーチ(TSR)によると、21年の企業倒産(負債額1000万円以上)は6030件。好景気に沸いたバブル期の1990年(6468件)をも下回り、高度経済成長期の64年(4212件)に次ぐ異例の低水準となった。
「コロナ禍で中小企業の経営は悪化したものの、ゼロゼロ融資のおかげで資金繰りに余裕ができた。これが倒産を防ぐ最大の要因になった」。TSRの友田信男・情報本部長はこう分析する一方で、ゼロゼロ融資は中小企業にとって「もろ刃の剣」だと警告する。
「ゼロゼロ融資であっても企業にとって『借金』であることに変わりはない。返済期間の延長など金融機関の対応にも限界がある。今年後半から金融支援の打ち切りなど問題が表面化する恐れがある」
「カネのなる木」群がった金融機関
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