学芸員とっておき秘話/1 本郷新記念札幌彫刻美術館 吉崎元章さん 戦争で苦しむ人表現 /北海道
毎日新聞
2022/5/1 地方版
有料記事
1259文字
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

現代に通じる「人間愛」
体をきつく布でまかれた人をかたどった15点の彫刻。ある者はうなだれ、ある者は天を仰ぎ、ある者は力なく横たわる――。札幌市出身の世界的彫刻家、本郷新(1905~80年)の代表作「無辜(むこ)の民」は、中東戦争の激化を機に1970年に発表された小品のシリーズだ。戦争で苦しむ市井の人々を独特の造形で表現したこの作品は、50年以上経た現在でも、見る人の心を引きつけ続けている。
本郷は日本の野外彫刻の第一人者として知られ、1950年には東京・上野駅前に日本で最初の野外彫刻とされる「汀(なぎさ)のヴィーナス」を設置し、西洋では一般的だった野外彫刻文化を日本に持ち込んだ。札幌・大通公園にある3人の踊り子が両手を掲げた「泉の像」、72年札幌冬季オリンピックを記念して札幌市南区の五輪橋に作られた「花束」など、生涯で約80点の野外彫刻を制作した。
この記事は有料記事です。
残り879文字(全文1259文字)