里山の命つなぐ火入れ、草刈り 「幻のバッタ」は復活した

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火入れと草刈りを行った草原はアカハネバッタの生息しやすい環境になる=永幡嘉之さん提供
火入れと草刈りを行った草原はアカハネバッタの生息しやすい環境になる=永幡嘉之さん提供

 田んぼ、原っぱ、雑木林……。人の手が入ることで維持されてきた里山は、その地域固有の生態系を育んできた。だが、過疎化などで全国的に存続が危ぶまれて久しい。「今行動しないと取り返しがつかなくなる」。東北の自然を見つめてきた写真家で、在野の研究者でもある永幡嘉之(ながはたよしゆき)さん(49)の記録と実践から、里山危機の現状と再生の可能性を探る。【阿部周一】

マタギの里で草原を再生

 山形県小国町の小玉川地区は、伝統的なクマ狩りが現在も続く「マタギの里」として知られる。飯豊(いいで)連峰のふもとに集落が点在するこの一帯は、冬は平屋の屋根に届くほどの雪が積もる。

 草木が芽吹く5月。地元の集落が管理するこの地の一角では住民が協力して「火入れ」をし、永幡さんも毎年手伝っている。

 火入れとは、春に行う山焼き、野焼きのことだ。かつて日本各地の里山で見られた「春の風物詩」だが、担い手が減り、今やすっかり珍しくなった。火入れによって広大な草原を維持でき、地表の枯れ草が燃えてなくなるので、裸地を好むアリやバッタなどが生息しやすい環境も生まれる。

 夏になると、講師を務めていた山形大の学生らと共に、伸びた草を刈る。そもそも草原を維持するのは草を資源とするためだった。「昔は冬場に農耕用の牛にやる干し草を確保するため、夏の草刈りが日課だった。だが、耕運機が牛に取って代わり、その必要がなくなった」

草原とバッタの深い関わり

 資源として活用されなくなり、放置された草原はすぐに荒れてしまう。実際に、この一角で草刈りが続けられていたのはごく一部で、他は背の高いススキが伸び、低木も生えていた。そこで永幡さんは集落の許可を得て、2018年から3ヘクタールの草刈りに乗り出した。

 1日では終わらない大変な作業だが、この土地に着目する大きな理由がある。それが幻のバッタ「アカハネバッタ」だ。

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