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ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

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ロシアは科学技術でも「孤立」するのか 歴史をひもとくと…

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ロシア北西部のプレセツク宇宙基地から発射される新型大陸間弾道ミサイル「サルマト」=2022年4月20日、ロスコスモス提供・AP
ロシア北西部のプレセツク宇宙基地から発射される新型大陸間弾道ミサイル「サルマト」=2022年4月20日、ロスコスモス提供・AP

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、欧州を中心にロシアとの研究協力を停止する動きが広がっている。旧ソ連時代にも研究が海外から孤立し、分野の低迷や若い研究者が育たないなどの事態を招いた。今回の侵攻はロシアの科学技術にどのような影響をもたらすのか。歴史をひもときながら、科学史の専門家と考えた。【鳥井真平】

 文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、論文数の世界ランキングでは、旧ソ連時代の1980年代の大半は5位だったものの、現在のロシアは15位(2017~19年平均)と低迷している。

 それでも存在感を示しているのが、旧ソ連時代に国策として推進された軍事科学技術の根幹となっている宇宙や原子力分野だ。宇宙分野では、国際宇宙ステーション計画に主要国として参加し、ソユーズ宇宙船で宇宙飛行士の輸送を担ったり、各国から人工衛星の打ち上げを受注したりしている。21年のロケット打ち上げ数は中国の55回、米国の51回に次ぐ25回に上る。原子力分野もトルコや中国などに原発を輸出し、20年5月には世界初の船舶型原発の営業運転を始めた。

 研究の国際化も進んでおり、ロシア発の論文における国際共著論文の比率は、91年の旧ソ連崩壊前後が12・1%だったのに対し、39・3%(17~19年平均)まで高まった。

 だが侵攻が始まった今年2月24日以降、欧州連合(EU)の欧州委員会は、ロシアとの研究協力の停止を表明。英国や米国、ドイツでもロシアとの協力を打ち切る動きが見られる。ロシアは、自国の研究者の国際学会での発表を停止するなどの対抗措置をとっている。日本は研究分野での制裁措置はしていない。

独自学説で停滞したライフサイエンス

 ロシア・ソ連科学史が専門の九州工業大の斎藤宏文准教授によると、旧ソ連の科学界の孤立が始まったのは、おもに1930年代からだったという。

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【ウクライナ侵攻】

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