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デマ信じ在日コリアン標的 被告がもたらした「恐怖」 ウトロ放火

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事件当時のまま残る、有本匠吾被告の放火により全半焼した建物の跡地=京都府宇治市で2022年3月11日、山崎一輝撮影
事件当時のまま残る、有本匠吾被告の放火により全半焼した建物の跡地=京都府宇治市で2022年3月11日、山崎一輝撮影

 「在日コリアンに恐怖を与える狙いがあった」。京都府宇治市のウトロ地区で昨年8月、民家7棟を焼いたとして、非現住建造物等放火罪に問われている男性が、複数回にわたり毎日新聞の取材に応じ、放火の動機を語った。「ヘイトクライム(憎悪犯罪)とみられても仕方ない」「反省も後悔もしていない」。男性はためらいなく自信たっぷりに自説を展開した。放火に至る背景に何があるのか。5月16日に京都地裁で始まる公判を前に考えた。

 男性は、奈良県桜井市の元病院職員の有本匠吾被告(22)。計3回、京都拘置所での面会取材に応じ、手紙による質問に対しても3回にわたり長文の回答を寄せた。メガネをかけ長髪。面会時の有本被告は記者の目を時折真っすぐ見ながら、淡々とした口調で質問に答えた。常に落ち着いた様子で、礼儀正しい印象すら受けた。

 事件は2021年8月30日午後4時過ぎに起きた。宇治市のウトロ地区の空き家に火を付け、周辺の住宅を含め計7棟を全半焼させたとして逮捕、起訴された。また、21年7月24日に名古屋市にある在日本大韓民国民団(民団)施設と韓国学校に火を付け施設を損傷させたとする建造物損壊罪などにも問われた。5日後の29日、奈良県大和高田市にある民団の建物への放火未遂容疑でも書類送検(その後不起訴)された。

「住民は批判を受けて当然」と放火

 放火対象はすべて在日コリアンに関連する場所。有本被告は取材に対し、3件4カ所とも犯行を認めた。ウトロ地区への放火の動機については「(住民が)日本に滞在することに対して批判、非難を受けて当然ですよ、という意味を含めた。恐怖を与える意味といっても間違いない」と語った。

 有本被告が、一方的に敵意を向けたウトロ地区とはどういう場所なのか。戦中の国策事業だった「京都飛行場」建設に従事する朝鮮人たちの作業員の宿舎群があり、終戦後も朝鮮人労働者やその子孫らが住み続けた。土地を所有する国策会社を引き継いだ企業が1987年に多くの住民が知らない間に土地を売却。その後、買い取った不動産会社が89年に住民を相手取り、土地の明け渡しを求め提訴した。2000年11月、立ち退きを命じる住民側の敗訴が確定。その後、日韓両国で集まった寄付や韓国政府の拠出金で土地の一部を不動産会社から購入し、「不法占拠」状態は解消した。さらに宇治市が主体となり、地区内に市営住宅を整備し、一部の住民が入居。23年度中に移転が完了する見通しだ。

 有本被告によると、放火を思いついたのは21年8月中旬。地区の歴史を伝える「ウトロ平和祈念館」が22年4月に開館することをニュースで知ったのがきっかけだという。その後、動画投稿サイト「ユーチューブ」等で、「(地区について)1週間足らずで調べ上げ…

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