運用益は主要校のみに 10兆円大学ファンドに高いハードル
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日本の研究力低下を打開しようと、世界に肩を並べる研究大学をつくるために政府が設置した10兆円規模の大学ファンドの支援校の要件を定める法案が、今国会で審議中だ。ただ支援校は一部の主要大学に限られ、収入を増やして成長することを求められるなどハードルも高く、大学関係者からは懸念の声も上がる。【池田知広、鳥井真平】
巨額の基金設立、政治も後押し
「国家基金が10兆円程度あると、ほとんどの国立の研究大学は救い出すことができる。ぜひ本気で考えるべきだ」。2019年10月にあった政府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の調査会。委員の安宅和人(あたか・かずと)・慶応大教授が熱弁をふるった。
データや人工知能(AI)の活用に詳しく、多くの公的機関の委員を歴任する安宅氏。この日挙げたのが、米ハーバード大など、独自にファンドを運用して潤沢な研究資金を得ている欧米の主要大学だ。一方、日本では、国立大学の「血液」とも呼べる運営費交付金が減った中、19年の世界大学ランキングで200位以内に入ったのは、東京大(42位)と京都大(65位)だけだった。
国の主導で巨額のファンドを運用し、運用益を研究資金に充て、世界と伍(ご)する研究大学にする――。こうした構想に、渡海(とかい)紀三朗・元文部科学相ら自民党の一部議員が同調し、計画が動き始めた。
文科省と内閣府は翌20年秋、10兆円という金額は示さないまま、基金の設立を概算要求に盛った。これに反対したのが財務省だ。公的資金をリスクの伴う投資に回した上、各大学に広く分配することに強い拒否感があったという。
「『国立大は口を開けて国からお金が転がり込んでくるのを待っているだけのところがある』と財務省は考えていた」。ある政府関…
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