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「もうライオンは飼いません」 変わる動物福祉の現場

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2019年ごろのライオンの雄「ナイル」。1頭だけで暮らしていた=京都市動物園提供
2019年ごろのライオンの雄「ナイル」。1頭だけで暮らしていた=京都市動物園提供

 京都市動物園を歩くと、こんな掲示が目に入る。「ライオンの飼育を行いません」。あの百獣の王はもう見られない。飼育員の好き嫌いで決めたのでも、人気投票で決めたのでもない。大学と連携した研究機関でもある動物園が最新の知見から出した結論だという。京都市動物園はライオンに限らず、飼育している動物について、ユーチューブやブログ、インスタグラムなどで詳しく解説している。「なんだか説明の多い動物園だな」。そう感じた記者は園のからくりを探った。【山田奈緒】

 なぜライオンを飼わないのか。その前に、ほかの動物の飼われ方をじっくり見ておきたい。

 まず、ピンク色の美しいフラミンゴたち。アフリカなどの生息地では数千から100万羽ほどの群れで暮らす大型の水鳥だ。飼育エリアに鏡が設置されていた。大群の中にいるように見えて安心感が生まれるという。

 さらに月1回、地面をふかふかに耕している。硬い地面との長い時間の接触や運動不足などで足裏にできてしまう炎症「趾瘤症(しりゅうしょう)」を防ぐためだ。

 次は、のんびりとした動きのフタユビナマケモノの雄「パチパチ」。熱帯雨林の高温多湿の環境に近づけられるよう、屋内の飼育部屋を整備し、真夏は屋外の広いクジャク舎を「間借り」する。

 日中は定位置キープの時間が長いナマケモノだが、夜間は日中よりも活発に動く。「どうせ動かないから」と狭い部屋に入れられては窮屈だろう。クジャク舎であれば日中は日差しを存分に浴びられるし、夜間も伸び伸びと動くことができる。

 2021年2月に生まれたキリンの雄「ミクニ」。年末に去勢手術を行った。大人になれば同じ群れで暮らす雄同士、長い首をぶつけあう激しいバトルが起きる心配があるからだ。ミクニを他の施設に移そうにも国内の動物園は雄の過多状態で、適当な引き受け先がなかった。

 成長し、巨体になれば全身麻酔の手術は困難が伴う。国内の先行事例を参考に、子どものうちに手術が行われた。

 「苦渋の決断」「行いたいことではない」。記者が動物園を訪ねた4月中旬は、動物の暮らしを快適にするこれらの「工夫」を紹介する写真展が開かれており、解説文にはこんな言葉もあった。「理想的にはいかない葛藤を抱える部分も含めて、ご紹介したいと思います」

正解、不正解でくくれない

 動物園はまだまだ多くの「工夫」であふれている。それは、動物の心身の健康の状態をより良くしていく「動物福祉」が実践されているからだ。

 「ライオンは飼いません」宣言もその試みの一つ。園が野生の生態を考慮して議論した結論だ。ライオンはネコ科では珍しく群れで暮らし、狩りも協力して行う。動物園としては小規模な敷地を考えれば、群れの飼育は難しい。

 とはいえ、以前はライオンを飼っていた。最後の1頭、雄の「ナイル」は20年に死んだが、ナイルを巡っては、老いた姿がある議論を呼んだ。

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