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韓国新政権と日本 関係修復し難局に対処を

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 冷え切った日韓関係を修復する出発点としたい。

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任した。岸田文雄首相の親書を携えて訪韓した林芳正外相に「関係改善へ向けて協力していきたい」と語った。

 安全保障を重視する保守派政権だ。昨秋の岸田政権発足と併せ、両国とも新しい体制となった。「国交正常化以降で最悪」となった近年の日韓関係の局面打開を図る好機である。

 新政権外相候補の朴振(パク・チン)氏は林氏との会談で、ロシアに侵攻されたウクライナへの支援で協調する考えを示した。日韓が足並みをそろえて人道支援や対露制裁などに取り組むことは意義がある。

 両国を取り巻く環境はかつてなく厳しい。

 ウクライナ侵攻で国際秩序が大きく揺らぎ、台湾への威嚇を続ける中国の動向への警戒心も高まっている。北朝鮮は、尹氏の就任式前にミサイル発射を繰り返した。

 地域の平和と安定を図るためには、日韓を含む民主主義国が結束を強める必要がある。

 バイデン米大統領は今月下旬に日韓を歴訪し、東京で日米とオーストラリア、インドによる4カ国(クアッド)首脳会議に出席する。日米韓の連携を立て直す契機にしなければならない。

 尹氏は選挙中から対日関係を改善する必要性を説いてきた。だが、植民地支配という過去を持つ両国関係のかじ取りは難しい。世論にも目配りした外交が求められる。

 慰安婦問題を巡っては、7年前に日本との合意をまとめた朴槿恵(パク・クネ)政権が国民の理解を取り付ける努力を怠った。それが後に、合意の空文化につながった。同じ失敗を繰り返してはならない。

 徴用工問題では、差し押さえられた日本企業の資産を売却する「現金化」の手続きが進んでいる。実行されれば日本は対抗措置を取らざるを得ない。尹政権にはまず、これ以上の状況悪化を防ぐ対応を求めたい。

 尹氏は、日本側との意思疎通の強化に意欲を見せている。日韓の首脳が率直に話し合う場を早期に設け、関係改善に向けた流れを作るべきだ。

 両首脳は、そのためのリーダーシップを発揮してほしい。

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