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毎日新聞社が発行する日本唯一の週刊点字新聞「点字毎日」が創刊100年を迎えた。
「点毎」の愛称で親しまれる。視覚障害者を含む記者が日々取材した記事や関係者の寄稿を掲載し、生活や社会参加、文化に関わる情報を提供してきた。
発刊は1922年である。ラジオ放送もない時代だった。
初代編集長の中村京太郎は「発刊の言葉」で、視覚障害者に「知識と勇気と慰安を与える」だけでなく「眠れる社会の良心を呼び覚まさん」との志を掲げた。戦時中も発行を続け、震災や感染症の流行時には困難に直面する視覚障害者の実情を伝えた。
東日本大震災では、避難所で掲示板の文字が読めず、トイレへの移動に苦労する様子などをリポートした。新型コロナウイルス禍では「人と人との距離を取る」ことが求められる中、仕事が減ったマッサージ師の窮状を報じた。
媒体も多様化した。「音声版」や「活字版」で当事者の家族や支援者らも点毎の記事に触れることができるようになった。
新聞以外の事業にも取り組んできた。創刊間もなく、国に先駆けて点字教科書を製作し、盲学校の生徒が教育を受ける権利を支えた。一般の視覚障害者のために点字講習会にも力を入れた。
国政選挙で点字投票が28年に世界で初めて実施された際には、事前に模擬投票を行い、視覚障害者の政治参加を後押しした。
2004年の参院選からは、候補者の経歴や政見を掲載した選挙公報の全文を点訳した号外を発行している。
「全国盲学校弁論大会」は、盲学校の生徒が社会に発信する貴重な機会となっている。28年から続いており、この秋で90回を数える。さまざまな境遇にある生徒が、自身の障害と向き合う中で得た気付きや将来の夢を語り、共感を呼んでいる。
「点毎の取り組みが視覚障害者の権利回復に向けた運動につながった」。障害者福祉に詳しい全盲の愼英弘(シンヨンホン)・四天王寺大名誉教授は評価する。
誰も取り残さない「共に生きる社会」は人類共通の目標だ。これからもその実現を目指し、点字を通じて情報を発信し続けたい。