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ロシア軍の激しい包囲攻撃を受けたウクライナ南東部の要衝マリウポリ。街の大部分は破壊され、露軍の占領下に置かれている。そこから北西約200キロの南部ザポロジエには日々、命からがら逃れてきたマリウポリ市民が到着している。5月上旬、現地で取材した。
200キロを1カ月かけた逃避行
町外れの倉庫の居室に、涙ぐむ女性と高齢者ら6人の姿があった。いずれも4月中旬にマリウポリを脱出し、1カ月近くかけてウクライナ政府側の拠点都市ザポロジエにたどり着いたばかり。
「私たちを助けてくれて、本当にありがとう」。終盤の道のりを車で送迎するなど支援したのは、プロテスタントの牧師ゲンナジー・モフネンコさん(54)らのボランティア組織だ。自身は侵攻直後にマリウポリから孤児院の子供たちを避難させ、戻れなくなったという。「これまでに1200人以上の脱出を助けた」と話した。前線近くまで食料など支援物資も運んでおり、小さな倉庫が彼らの基地だ。
「悪夢がようやく終わった」と口にする避難民に体験を聞いた。
会計士のエレーナ・アバルマソワさんと18歳の娘ワレリヤさんの母子は、戦闘の最前線となったエリアの9階建て共同住宅で暮らしていた。2月下旬に露軍の侵攻が始まって、すぐに地下駐車場へ他の住民約100人と避難したという。隣の建物が焼け落ちたため、そこの住民たちも受け入れた。「私たちの住宅は合計5回の攻撃を受けた。爆発で腕や脚を引きちぎられた人たちは出血多量で死んでいった」。エレーナさんは振り返る。
電気、水道など生活インフラは全て破壊された。外で集めた枯れ枝でたき火をおこして調理し、雑魚寝する日々。「3月までは寒くて足が凍え、寝るのもつらかった」。それでも侵攻当初にウクライナ軍兵士が地下へマットレスや食料、医薬品を運んでくれたことが功を奏し、生き延びられたと感謝している。
「隣人に殺されるかも」
市民にとって一番危険だったのは、水源から飲み水を運んでくる作業だった。砲撃や流れ弾をかいくぐって行くしかない。道路には犠牲となった人々の遺体がいくつも横たわっていた。
爆音の中で緊張を強いられる生活だったが、エレーナさんは「戦争には少しずつ慣れていった」と語る。むしろ、市民の間での略奪行為の横行が「戦争より怖かった」という。食料品が不足する中、他人から力ずくで奪ってでも得ようという住民も現れていたからだ。「下手すれば隣人に殺されるかもしれない。人はそんなところまで落ちてしまう」
露軍による占領後、ロシア側が開いた人道支援物資の配給所へ何度か足を運んだ。午前11時の開始を目がけ、腹をすかせた人々が早朝から列を作る。屈辱的だった…
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