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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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盗んだたばこを元手に生き延びた マリウポリ男性の脱出20日間

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ロシア軍から攻撃されたウクライナ南東部マリウポリから脱出を試みていたとみられる車の列=2022年3月17日、ロイター
ロシア軍から攻撃されたウクライナ南東部マリウポリから脱出を試みていたとみられる車の列=2022年3月17日、ロイター

 ロシア軍の激しい包囲攻撃を受けたウクライナ南東部の要衝マリウポリ。街の大部分は破壊され、露軍の占領下に置かれている。そこから北西約200キロの南部ザポロジエには日々、命からがら逃れてきたマリウポリ市民が到着している。5月上旬、現地で取材した。

 「巨大なローラーが街の上を転がり、全てを押しつぶす光景を想像してほしい。空爆、ミサイル、さまざまな爆弾が住宅を襲った。やつらには何のためらいもない。これはまさにジェノサイド(大量虐殺)だ」

 6日、ザポロジエ郊外の避難民受け入れ所にマリウポリから到着したばかりの男性、アレクサンドルさん(56)=仮名=は沈鬱な表情で語った。元ウクライナ軍人のため、占領地に残る知人らへの危害の恐れを考えて本名は明かせないという。

自軍兵もひいたロシア軍の戦車

 アレクサンドルさんはロシア軍による2月24日の侵攻開始後、国防省傘下の地域防衛隊の一員として防衛戦に加わった。住宅の間を走り回り、ざんごうから銃を撃ったが、多勢に無勢だった。仲間は3人しか残らず、比較的頑丈な自宅の半地下部分へ逃げ込んだ。

 「住居を破壊された隣人たちを助け、地下室に閉じ込められた人々を救出したこともあった」。一緒に暮らした隣人の中には高齢女性も3人おり、1人は負傷していたが治療の手立ては無かった。「市街戦は民間人の犠牲を意味する。誰がやつらを招いたというのか」と憤る。

 露軍の戦車が自国側の戦死者や負傷兵をも踏み潰しながら走って行く様子を目撃したという。「花火のように落ちてきて、その後、燃え始める」という焼夷(しょうい)弾での攻撃も体験した。

ガソリンや小麦…1箱で何にでも交換

 戦禍の中では生き抜くのに必死だった。幸い、近くの泉から飲み水は得られた。食料は倉庫から盗み出したり、破壊された家々から穀類を少しずつ見つけたりした。ある壊れた倉庫で見つけたたばこ2カートンは貴重だった。たばこ1箱が「ガソリン1リットル、小麦1キロなど何にでも交換できた」からだ。

 緑豊かな港湾工業都市だったマリウポリは変わり果てた。「もはや何もない。一からの再建が必要になる。やつらは大型爆弾も落とし、爆発で巨大なクレーターができている」

検問所のチェックが甘く通過

 アレクサンドルさんが市内から脱出したのは4月17日だった。運良く車に乗せてもらったり、歩いたりしながらいくつもの検問を通過し、ザポロジエまでは実に20日間かかった。

 露軍は占領地から出ようとするウクライナ軍関係者をデータベースで特定し、拘束しているという。アレクサンドルさんの場合はリストでのチェックが甘かったため、危うく難を逃れ…

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【ウクライナ侵攻】

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