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知っ得!?マイクロアグレッション

あからさまな差別ではないようで、実はマイノリティーに対して攻撃的な「マイクロアグレッション」。あなたは知っていますか?

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女性専用車両は特権か 差別を自覚するための「立場の心理学」とは

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国際女性デーに、性差別撤廃や反戦を訴えてデモ行進する人たち=東京都渋谷区で2022年3月8日午後6時3分、吉田航太撮影
国際女性デーに、性差別撤廃や反戦を訴えてデモ行進する人たち=東京都渋谷区で2022年3月8日午後6時3分、吉田航太撮影

 「あなたは『特権』を持っています」といきなり突きつけられるのは、マジョリティーの側だって苦しい。「特権」を自覚した上で、より公正な社会へと変えていくために、必要な学びとは何なのか。連載2回目に続き、上智大教授(社会心理学)の出口真紀子さんに、「特権を自覚する」をテーマにした講義について聞いた。受講した大学生たちに、いったいどんな変化が見られたのだろうか?【オピニオングループ/小国綾子】

社会階級による特権

 ――出口さんが上智大学で行っている「特権を自覚する」がテーマの講義について、続きを教えてください。最初の講義では米国の「白人特権」を取り上げるのですよね。

 ◆「白人特権」から入る理由は、自分自身の「特権」についていきなり突きつけられるのは、心理的にきついからです。なので、ワンクッション入れて、自分の属性とは少し距離のあるものから始めると、「特権」がどういうものなのかの理解を得ることができます。

 その次は、社会階級による特権を取り上げます。これも学生には比較的受け入れられやすい特権の一つだからです。

 具体的には、養護施設のカウンセリングなどに携わる臨床心理士の水木理恵さん(福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター)が、上智大生用に作ってくれたエクササイズを使います。

 60項目の質問に答えることで、自分の所属する社会階級がどれほど特権を持っているかを数値化できます。

 例えば「子ども時代、いくつ習い事をさせてもらっていたか」「小学校で給食費を払うことができたか」「学校でついていけない教科があったか」「塾に通っていたか」「中学校は私立学校だったか」など。上智大生は中高一貫の私立校出身者が多いですが、周囲のクラスメートたちと自分が似たような属性や境遇なので、自分がいかに優位な立場にいるかということになかなか気づけないのです。

「親に感謝」を越えて

 このエクササイズの後、学生たちは自分たちが経済的に恵まれた家庭に育ったこと、勉強に専念できる環境にいたことに気づかされます。ただ、「親に感謝しなければならないことが分かりました」という感想だけで終わってしまっては意味がないのです。より社会が公正になるために変革する側につく、ということをしない限り現状の社会構造を維持するままになってしまいます。

 そこでさらに水木さんから、児童養護施設で育った人たちの話をしてもらいます。大学進学率がとても低いこと、現状では18歳で施設を出なければいけない場合が多いこと、アルバイトを一生懸命にやっても生活費を稼ぐのに精いっぱいであることなどを話してもらいます。

 学生たちは、安定した家庭で育てられるという特権、大学に行かせてもらえる特権に気づき、「大学に行けないのは、本人の努力不足」といったひずんだ考え方を学び直す作業をします。

 白人特権と社会階級特権で講義の1~5回を費やします。6回目からは、ようやく男性の持つ特権を取り上げます。

「男性特権」は6回目から

 ――なるほど、比較的受け入れやすい特権から教えていき、「男性特権」はその後なのですね。

 ◆授業の最初からいきなり「男性特権」を取り上げると、やはり抵抗・反発が起きやすいのが現状です。なので、白人特権や社会階級特権について学びながら、特権という概念についてある程度認識し、そういうものがある、ということを納得した上でいよいよ「男性特権とは何か」という話題に移るのです。

 やはり、ここでもいきなり「男性特権とは」で始めることはしません。まずは「女性特権はあると思いますか?」という問いから講義に入ります。

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