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◆東山彰良(ひがしやま・あきら)さん
(新潮社・2860円)
エンタメ通じ、現代史を体感
昨年、初の純文学短編集『どの口が愛を語るんだ』で新境地を開いた著者のさらなる挑戦だ。「幾つかやってみたかったことが、たまたまうまくつながった」という本作は、作中作として日台中の「戦争」を織り込んだ、異色の恋愛小説となった。
9歳まで台湾で育ち、戦争を身近に感じてきた。戦闘こそなかったが、当時の台湾は戒厳令下で「映画もプロパガンダ的な内容のものが多かった」。親族にも軍人が多く、祖父の体には戦争で受けた銃撃の痕があり、その従軍体験を一種の「冒険譚(たん)」のように聞いて育った。デビュー以来、「いつか祖父の時代の物語を書きたい」と温めてきて、まずは「腕試し」に父をモデルにしたのが、直木賞受賞作『流』(2015年)だった。…
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