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戦国武将・織田信長の側室、吉乃(きつの)の墓がある久昌寺(きゅうしょうじ)(愛知県江南市)の建物の一部に、信長時代の天正年間(1573~92年)の古材が使われている可能性があるとして、今月9日から始まった寺の解体工事が14日、一時中断された。市文化財保護委員の指摘を受けて市が寺の所有者と協議し、19日まで詳しく調査することが決まった。
市史などによると、寺は室町時代の1384年創立。現在の本堂は大正期の1925年築で、庫裏は江戸期の建築とされるが、老朽化などから維持が難しくなり、9日から解体工事が始まっていた。既に窓や庫裏の屋根瓦などが撤去されている。市はこれまで寺の調査をしてこなかったが、「愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会」名誉会長で市文化財保護委員会委員の長谷川良夫さん(90)が図面づくりのため4月に調査した結果、庫裏の土間から部屋に上がるための階段のような木材が加工痕などから天正年間のものと推定されることが分かり、本堂についても大正時代より古い可能性があることが判明した。
長谷川さんは5月6日、市指定文化財として保存することを市に提案。市幹部が対応を協議し、寺を所有する宗教法人役員で吉乃の生家・生駒家の19代当主、生駒英夫さん(48)に工事の一時中断を打診し、再調査することが決まった。
毎日新聞の取材に江南市の沢田和延市長は「何をどう残すかなどは白紙。調査結果や所有者の意向などを聞いて判断したい」と説明。再調査の依頼を受けた長谷川さんは「どこまで古いものが残っているのか、天井裏までしっかり見て調べたい」、生駒さんは「調査の結果、価値あるものと分かれば、どのような形にせよ観光振興や文化財保護の観点から残してもらえばうれしい」と話している。【川瀬慎一朗】