在日コリアンとの対話で知る「うぎゃー感」無意識の偏見への気づき
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「マイクロアグレッション」という新しい概念が、異なる背景を持つ者同士の対話を深めてゆくのに役立った、と明かす2人がいる。在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター(ZAC)代表で精神保健福祉士の丸一俊介さんと、臨床心理士で在日コリアンのShizukuさん(ニックネーム)だ。2回にわけて、2人の具体的な実践を報告したい。【オピニオングループ/小国綾子】
<丸一さんとShizukuさんは在日コリアンのメンタルヘルス支援のため、2020年、ZACを設立した。在日コリアンが心の不調で精神科医療にアクセスしても、彼らの歴史や置かれた状況を知らない精神科医やカウンセラーに、それを一から説明しなければならず、適切なサポートを受けられないことが多いためだ。在日コリアンの自殺率は、日本人の約2倍とも言われている>
「特別に悪い人」じゃない
――マイクロアグレッションの概念は対話を深めるのにどんなふうに役立ちますか。
Shizukuさん 互いの対立や葛藤を「加害」「被害」といった個人の問題だけに還元するのではなく、その背景にどんな社会構造があるのかを一緒に考えることができる。だから活用の仕方次第では、対話の可能性は広がっていくと思います。
丸一さん 差別する人を「特別に悪い人」だと思っていると、マイクロアグレッションという概念に触れた時、自分が差別者と非難されることを恐れ、反発してしまいます。でも、誰だって偏見や差別意識から完全に自由ではありません。それを認めることから対話が始まるのだと思います。
――Shizukuさんと丸一さんの実践について教えてください。
丸一さん 10年くらい前から日本人と在日コリアンが一緒になって小さなグループ活動をしてきました。たった一人のマイノリティーのためだとしても、社会や自分自身が変化していこう、と始めた会でした。ZACの前身となったグループで、在日コリアンと日本人が3人ずつ、合計6人がコアメンバーでした。
Shizukuさん 在日コリアンと日本人が同じ人数だった、というのが大きかったです。在日コリアンが1人だったら切り出せないような日本社会への違和感といった話題も、仲間がいるから口にできた面がありました。在日コリアンたちがこれまで言えずに黙っていたような日本社会への違和感、つらかった体験を語ることができました。
ただ、相互理解を目指した善意のグループでも、コミュニケーションがうまくいかなくなる場面があり、在日コリアンのメンバーの側にモヤモヤした気持ちが募っていきました。
――モヤモヤした気持ち?
Shizukuさん 例えば、在日コリアンが自分の被差別体験を語った時に、日本…
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