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ニッポンへの発言

アイドル評論家・中森明夫さんが、エンタメ業界のさまざまな話題を軸に世相を切り取ります。

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キーワード 甦る、左川ちか=中森明夫

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『左川ちか全集』
『左川ちか全集』

 『左川ちか全集』の刊行は文学史上の一事件だ。1911(明治44)年生まれ、36年に24歳で亡くなった。10代で翻訳家としてデビューして、幾多の先鋭的な詩を遺(のこ)し、時に“幻の詩人”とも称される。一部で熱狂的な支持を得るが、広範に知られた存在ではない。だが、4月に上梓(じょうし)されたこの一巻全集が今、大手書店で平積みにされて並んでいる。一驚に値する光景だ。

 左川は北海道余市町出身で、この全集を刊行したのは福岡県の意欲的な出版社・書肆(しょし)侃侃房(かんかんぼう)である。北の詩人を南の出版社が甦(よみがえ)らせる(周縁から中央を撃つ!)。黒地に金の文字の名久井直子の手による素晴らしい装丁は、さながら黒い宝石箱のよう。本自体がただならぬオーラを放っている。これで2800円(税別)とは格安というべきだろう。

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