「簡単なこと」学校図書館利用5人→350人 「本の探偵」の改革
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「本の探偵」の異名をとる児童文学評論家、赤木かん子さん(65)は、自治体からの依頼を受け、全国の学校にある図書館の改革に取り組んでいる。3日間の改革で5人ほどだった1日の利用者が約350人に増えた中学校もあるという。子どもが本を手に取りたくなるコツや読書の効果を聞いた。【聞き手・国本愛/東京社会部】
「数字が苦手で出版社では働けない」
――子どもの頃から本が好きだった?
◆5歳の時に「本でご飯を食べていこう」と考えるくらい好きだった。初めて本がすごいと思ったのは、アメリカのガネットが書いた児童文学「エルマーのぼうけん」。内容はもちろん、翻訳も素晴らしくて、ものすごくわくわくした。
ただ、成長するにつれて、自分はあくまでも物語を消費する側で、つくる側ではないと感じるようになった。だから高校時代から図書館や出版社でアルバイトし、向いている仕事を探した。でも、数字が苦手で早くから出版社では働けないと分かった。当時、出版はまだ活版印刷で、編集者は活字を組むために文字を数えないといけないのに、私が組むと、いつも3行くらいはみ出してしまった。
行き着いたのが、書評のライターだった。大人へのクリスマスプレゼント用に、児童書を紹介する「烏賊(いか)」という雑誌を作ったら、とても好評で。それから徐々に書評の仕事が来るようになった。
「使えない図書館だ」「じゃあ直して」
――赤木さんは、「本の探偵」とも呼ばれている。
◆その書評雑誌に、子どもの頃に読んだのに、タイトルや作者を忘れてしまった本を見つける「本の探偵」を始めます、という広告を出したのが始まり。子ども時代に印象に残った本を尋ねることで、子どもがどんな児童書が好きなのかが分かると考えた。
この雑誌広告について新聞社の取材を受けて記事になったら、手紙で5000通以上の依頼が舞い込んだ。当時は、手書きで一通一通返事を出したので、本当に大変だった。
どの依頼にも本を探すのに役立つサイズや挿絵といった情報が実に正確に記されていて「子どもはビジュアルに強い」と感じた。
――図書館改革に取り組むようになったきっかけは?
◆40代後半の頃、東京都内の小学校で図書館担当をしていた知り合いの教員に「遊びにこない」と誘われて行ってみたら、本の種類やレイアウトなどのひどさにびっくりした。整頓されてはいるけど、「使えない図書館だ」と思った。正直に伝えたところ「じゃあ直して」と頼まれた。
気軽に引き受けたら、1カ所を直すと玉突きでどんどん変えなくてはいけなくなってしまって。どこにも図書館改革のやり方なんて書いていなかったから、結局、1年半もかかった。改革後は、その小学校で図書館を使う子どもの数が年間10倍になったと聞いた。
そこから、各地の学校の図書館改革を頼まれるようになった。横浜市内の公立中学校では全校生徒が1000人を超えるのに、月の利用者は5人ほどだった。でも3日間の改装によって約350人に増やすことができた。今は東京都や広島県で公立の小中学校、高校の図書館改革を進めている。
「子どもはビジュアルセンスがいい」
――図書館改革のポイントは?
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