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プーチン氏は正気だ 民主主義に反感と憎しみ 政治学者・五野井郁夫さん

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インタビューに答える五野井郁夫・高千穂大学教授=東京都杉並区で2022年5月11日、宮本明登撮影
インタビューに答える五野井郁夫・高千穂大学教授=東京都杉並区で2022年5月11日、宮本明登撮影

 国際社会の非難を無視してウクライナに侵攻するプーチン露大統領の暴挙は、正気の沙汰とは思えない。釈然としない思いを政治学者で高千穂大教授の五野井郁夫さん(43)にぶつけると、まず冷静にプーチン氏の行動原理を見定めるよう諭された。「暴挙に見えても、彼なりの合理性で動いている」。その合理性とは何なのか。

 プーチン氏を武力行使に駆り立てる思想を解き明かしたい。大学の研究室で五野井さんにそう伝えると、刺激的な言葉が返ってきた。「プーチン氏は正気を失っているとは思いません。ただ、現在は自由民主主義の価値観を共有していないことはたしかです。プーチン氏は自らがロシアの支配圏と考える国を取り戻そうとしています。その際、国際規範を理解しつつも重視していないと言えます」

 初めに、近年のプーチン氏が自己正当化に利用する思想について解説してくれた。特にプーチン氏が愛読するのは、宗教哲学者のイワン・イリイン(1883~1954年)だ。共産主義を暴力で倒すことを目指し、ナチズムを強烈に支持した。イリインの思想は、「退廃的な西洋的価値観」とする自由・平等に汚されないロシアこそが純粋だと説く。「純粋ロシア」復権のため、「救世主」たる指導者の下で人々を国家に服従させるファシズム的な思想だ。

 「プーチン氏は数年にわたり年次教書演説でイリインを引用し、強い支配を正当化しました。2009年にはスイスで客死したイリインの墓を現地から国内に戻しています」

 イリインの思想は、1920年代にロシア革命で国外に逃れた知識人の間で流行した「ユーラシア主義」に影響を与えていく。ロシアをヨーロッパでもアジアでもない「ユーラシア」と自認する民族中心主義的な主張とされる。そして、ソ連崩壊後の90年代以降、ロシアが経済・社会的に苦境に立たされる中、新たな解釈が加わり、「新ユーラシア主義」が生まれた。

 「大統領就任当初のプーチン氏は欧州と協調姿勢を見せ、一時期は『ロシアもそのうちNATOに』という発言さえした。だが、NATO側は『それはない』と一蹴した。…

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【ウクライナ侵攻】

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