この国はどこへ これだけは言いたい 国民を変えた「勝ち組政治」 政治ジャーナリスト・角谷浩一さん 61歳
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ロシアのウクライナ侵攻や北海道・知床半島沖での観光船沈没事故など、最近の大ニュースに埋没し、永田町発の話題はすっかり影が薄くなったように感じる。国会議事堂前で政治ジャーナリストの角谷浩一さん(61)にお会いすると、この国の政治の変貌が社会のすべての事象につながっているんですよ、と喝破してみせた。
「最近、何か事件や事故が起きると、国民は最初にいけにえを作りたがるようになったと思います。世論は誰かが悪いということを決めつけ、方向性を決めようとするのです」。国会内の食堂に場所を移した角谷さん、まずはこれだけは言いたいということを語り始めたのである。その例として挙げたのが冒頭の観光船事故。「運航会社が非難されるのは当然です。しかし、いろいろ不備があったにもかかわらず、書類の体裁が整っていたということで検査に合格させた国土交通省に責任がないといえるのでしょうか。今は、船会社の社長だけが悪いというような雰囲気が出来上がっているじゃないですか」
同様の例は他にもあるという。牛丼チェーン吉野家の役員による女性蔑視発言、私立秀岳館高サッカー部(熊本県八代市)の男性コーチの部員への暴行問題などだ。「吉野家の件はその後、外国籍を理由に採用説明会への学生の参加を拒否したという別の事案も出てきた。実は会社の体質に原因があるのかもしれない。サッカー部の暴力も、監督が事実と異なる発言をしていたことが明らかになった。今は渦中の人物に世の中がまず『悪い人』とレッテルを貼り、その後に『実は』といったふうに事態が刻々変化していくケースが多い気がします」
これを報道するメディアのみならず、問題の本質はむしろ、一方的なモノの見方や構図を作りがちで、結論を急ぎすぎるこの社会にある――角谷さんは持論を披歴したうえで、こうした殺伐とした「流れ」はここ10年でいっそう強まったようだと指摘する。つまり第2次安倍晋三政権が誕生した2012年以降ということだ。
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