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終わりが見えない新型コロナウイルス禍。都会では居場所のない子どもたちが日夜、路上に集まる。10代を中心に「グリ下」「トー横」と呼ばれる地域で気兼ねなく時を過ごす一方、犯罪に巻き込まれる危険もある。大阪市生野区の認定NPO法人「CPAO(しーぱお)」は今春、そんな子どもたちが身を寄せられるシェアハウスを開設した。「追い詰めるのではなく、子どもたちのよりどころにしたい」。代表の徳丸ゆき子さん(51)がそう話す原点に、ある体験があった。
少年の涙
約2年前。当時16歳の少年は母親と折り合いが悪く、家出をしてはミナミに繰り出した。徳丸さんは親子の相談に乗っていたが、少年はある日単身で上京した。仲間に「未成年でも夜に働けるバイトが新宿の歌舞伎町にある」と聞いたからだ。
しかし、たどり着いたのは犯罪の現場だった。現地で知り合った相手に「新宿に無料で使える部屋がある。部屋にいる間はマニュアル通り電話をすればいいだけだから」と言われ、気付けば特殊詐欺の「かけ子」になっていた。警察に摘発され、少年鑑別所に入った。徳丸さんが面会に訪れると、少年は涙を流して語った。「おかんが出て行けっていうから家を出た。後は自分で生活するしかなかった。部屋に住み込んでいたから、電話をかけるしかなかった」
子どもの社会参加などに取り組んできた徳丸さんがCPAOを設立したのは2013年。同年5月、大阪市北区のマンション一室で母子の遺体が見つかった事件がきっかけだった。困窮の末、母(当時28歳)と息子(同3歳)が餓死したとみられ、「子どもに、最後におなかいっぱい食べさせてあげたかった」と手書きのメモが残されていた。そんな悲劇が繰り返されないようにと、困窮家庭などの支援を続けてきた。
シェルターがほしい
16歳の少年のように上京した子らを追い、東京・歌舞伎町の通称「トー横」を訪れた。…
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