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イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスが一時停戦してから21日で1年となった。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、国際社会のガザへの関心は低下。資金は集まらず、戦闘で破壊されたガザの復興は進んでいない。イスラエルとハマスによる「冷戦」も続く。現状を追った。【パレスチナ自治区ガザ地区で三木幸治】
「家族がいない現実に、どうしても慣れることができない。心は重くなるばかりです」。ガザ北部ベイトラヒアに住むカーリド・ムハンマドさん(28)は、そう言って目を伏せた。
昨年5月13日午後11時。イスラエル軍の戦闘機が自宅隣の集合住宅を爆撃した。地鳴りのような音が響く中、カーリドさんは台所にいた息子と妻に声をかけ、みんなで必死に外に出た。だが次の瞬間、2発目の爆弾が、カーリドさんが住む集合住宅に落とされた。意識を失い、気づいたら病院だった。左足に爆弾の破片が突き刺さっていたが、命は助かった。だが医師は言った。「お父さんと妹さん3人は亡くなりました」。隣の部屋に住んでいた4人は、逃げ遅れたのだ。
あれから約1年。4月はイスラム教徒にとって重要なラマダン(断食月)だった。日中は水や食事を断ち、日没以降に親族や友人と一緒に食事をするのが習わしだ。だが、今年は父と妹がいない。食事をするたびに4人との思い出がよぎり、涙が出てくるという。
カーリドさんの住宅があった場所は、更地のままで、多くのごみが捨てられている。ハマスは「国外から資金提供があれば、住宅を再建する」としているが、いまだに何の連絡もない。
今は妻と息子、そして爆撃で負傷し、歩けなくなった母とともに狭い賃貸住宅に暮らす。プロパンガス配送の職は足の負傷で失い、知人からの援助でやり繰りする毎日だ。「戦争で家族だけでなく、家や仕事も失った。前向きになんてなれない」。カーリドさんは深いため息をついた。
ガザ当局によると、戦闘で一部が損傷した建物は7割が復旧。だが全壊した建物1700軒のうち再建されたのは1割だ。…
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