識者はどう見る? 北海道新聞記者逮捕 「報道の自由」どこまで

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
記者の不起訴処分を報じる北海道新聞の4月1日朝刊紙面。編集局長名で「不起訴に当たって」とコメントを掲載した
記者の不起訴処分を報じる北海道新聞の4月1日朝刊紙面。編集局長名で「不起訴に当たって」とコメントを掲載した

 北海道旭川市の国立大学法人旭川医科大で2021年6月、取材をしていた北海道新聞社(道新)の20代の女性記者が建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。今年3月に不起訴処分となり捜査は終結したが、取材中の記者が逮捕されたことで、社会的に関心の高い問題についての「報道の自由」がどこまで許されるのかが問われた。

 道警などによると、記者は6月22日、立ち入り禁止とされた同大構内に許可を得ず立ち入ったとされる。

 この日、同大では吉田晃敏学長(当時)の解任を審査する学長選考会議が開かれていた。吉田氏は新型コロナウイルスの感染者受け入れを訴えた同大病院の院長に辞任を迫る発言をし、学長選考会議が設置した外部調査委員会がこれをパワーハラスメントと認定。吉田氏は6月17日に文部科学相に辞任を申し出たと公表し、選考会議の動静が注目されていた。

 同18日の選考会議の際は、複数の記者が取材のため構内に入ったが、同22日は、同大が会議後に報道各社の取材に応じるとし、「新型コロナ感染防止」を理由に構内への立ち入りを禁止していた。

 記者は会議室前の廊下で、室内の音声をスマートフォンで録音していたところを大学職員に取り押さえられ、旭川東署員に引き渡された。同署は記者を2日間拘束した後、釈放した。

 捜査関係者によると、記者は取り押さえられた直後、身分や目的を話さなかったという。2日間の拘束は「共犯関係が疑われ、証拠隠滅の恐れもあった」ためだという。

不起訴処分で終結

 同署は任意の捜査で関係者を事情聴取した結果、建物内に入った入社3カ月目の記者が、現場責任者だった40代の女性記者の監督下にあったと認定し、今年3月に2人を書類送検。旭川区検は同月、2人を不起訴処分とした。区検は処分の理由を明らかにしていない。

 一方、道新は20代の記者の逮捕を容疑者呼称を付けて実名で報じた。昨年7月7日朝刊で「社内調査報告」を掲載。小林亨編集局長名で「大学の取材対応は十分とは言い難く、取材中の記者が逮捕されたことは遺憾」としつつ「状況を検証する限り、反省すべき点もある」とした。9月14日朝刊の特集面では、編集局長が「建物の中に深く入って盗聴することは、建造物侵入罪が成立するなかでも悪質との法的な解説もあり、外形的事実に争いがないと判断した」と説明した。

 不起訴処分後には、編集局長名で「立ち入りが取材目的だったことも考慮されたと受け止めている」としたが、道警の対応への言及はなかった。4月に「組織取材のしかたに反省すべき点があった」として、編集局長を役員報酬減額にするなど社内処分を発表した。

逮捕翌日「直ちに釈放を」と意見書

 北海道新聞社は20日、取材に対し、弁護人に選任した顧問弁護士が逮捕翌日の昨年6月23日付で「勾留請求をすることなく、直ちに釈放すべきである」とする意見書を旭川東署と旭川地検に送付していたことを明らかにした。記者の逮捕を容疑者呼称付きで報じたことは「必要な検討をした上で、掲載基準に基づき対応した」と説明した。【谷口拓未】

澤康臣・専修大教授「道新の対応不十分」

 国立大学長の不適切な発言と進退を巡る高度に公的な会議が取材対象で、話し合われた内容を市民に伝える必要があった。

 その過程で記者…

この記事は有料記事です。

残り1886文字(全文3226文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集