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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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強じんでないロシア経済 戦争続けられるのか 欧州の専門家が解説

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欧米諸国から相次いで制裁を科されているが、プーチン露大統領はウクライナでの軍事作戦を続けている=モスクワで2022年5月9日、スプートニク通信・ロイター
欧米諸国から相次いで制裁を科されているが、プーチン露大統領はウクライナでの軍事作戦を続けている=モスクワで2022年5月9日、スプートニク通信・ロイター

 ウクライナに侵攻を続けるロシアに対し制裁を科す欧米諸国などは「ロシア離れ」を進めている。フィンランドの研究機関BOFITのイイカ・コルホネン調査部長は、毎日新聞のウェブ取材に応じ、ロシア経済は強固ではないと指摘する。制裁を更に厳しくすれば、戦争を継続できなくなるのだろうか。【聞き手・宮川裕章】

 ――ロシアの通貨ルーブルは一時下落したものの、持ち直しています。

 ◆そのほとんどはロシア中銀や財務省による通貨管理政策による効果だ。ルーブルは事実上、他の通貨と交換ができない状況になっている。

 ――ロシア経済は、なんとか持ちこたえているように見えます。

 ◆必ずしもそうではない。私たちのデータでは、ロシア国内の需要も生産も相当減少している。例えば3月の自動車生産は前年比で5割落ち込んでおり、崩壊状態と言える。他の製造業でも外国からの部品供給が滞り、生産の継続が難しくなっている。

 ロシアは外国との貿易量のデータの公表を取りやめているが、相手国のデータをたどると、4月の中国からの輸入は昨年末と比べ約50%、台湾、ベトナムからの輸入は7割減っている。米国や日本、ドイツ、フランスからの輸入も激減している。

 ――ロシアの一般家庭にも影響は及んでいますか。

 ◆物価上昇が深刻化している。今年初めと比べ、食料品や電気製品、自動車などの価格は3割から5割上がった。物価全体でも昨年末より13%高い水準だ。食料品の物価上昇は、特に低所得者層に打撃を与える。彼らは収入の多くを食料品に費やすからだ。

 一方、中間層は外国企業の撤退や外国企業との取引の減少などの影響を受けやすい。今後、失業や転職による所得減に直面することになる。

疑問視する「自立性」

 ――ロシアは2014年のクリミア強制編入で経済制裁を受けて以降、経済の自立性を高めてきました。

 ◆輸入品を減らし国内産に置き換える輸入代替政策を進めてきたが、ほとんどのケースでうまくいっていない。自国産品の増加に成功したのは、穀物など限られた分野だ。昨年、ロシアは新型コロナウイルス感染拡大による経済の落ち込みからは回復したが、それでも国民の平均可処分所得は13年の水準を下回っている。

 ロシア政府は現在、ガソリンやディーゼル燃料などの価格を抑えようとしているが、物価上昇を止めることは難しい。世界の多くの国がロシアとの取引を避けており、外国からの部品供給などの不足に対し、政府ができることは限られている。飛行機の交換部品の不足から、航空貨物便も3月は前年比で8割減っている。

 ――ロシアの企業や国民は厳しい経済環境に慣れているといわれます。

 ◆それは過去の話だ。この20年間、ロシアでは多くのことが変化した。以前は自宅で野菜を栽培するなどして急場をしのいだが、今は都市化が進んで、そのようなことができる人は減っている。多くの人が1年に1度外国旅行を楽しみ、数年で車を買い替えるような中間層の生活に慣れている。

EUが原油輸入禁じれば大きな影響

 ――欧州連合(EU)が原油の禁輸を検討しています。

 ◆原油輸出からの税収は、ロシア財政の柱となっている。もし原油の輸出が減少すれば、ロシア財政に大きな影響が出る。ロシア政府は欧州からの需要の減少分を中国やインドなどアジアの国々で補おうとするだろうが、すべてをまかなうことはできないだろう。世界の多くの石油関連企業や海運会社、保険会社がロシアとの取引を避けているからだ。ロシア産ウラル原油の価格は欧州の北海ブレント原油より1バレル=30~35ドル安い水準で推移しており、ロシア産原油の買い手が減っていることを意味する。もし今後、原油の禁輸が厳しくなるなら、ロシア政府の収入は大きく減少し、戦争の継続を難しくするだろ…

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【ウクライナ侵攻】

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