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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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侵攻は「気候戦争だ」斎藤幸平さん 対ロシアの陰で高まる別のリスク

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斎藤幸平氏=東京都千代田区で2021年10月4日、内藤絵美撮影
斎藤幸平氏=東京都千代田区で2021年10月4日、内藤絵美撮影

 「気候変動対策が成功するかは、この戦争をどうやって終わらせるかにかかっている」。ロシアによるウクライナ侵攻を「気候戦争」と指摘するのが、斎藤幸平・東京大学准教授(35)だ。「気候」と「戦争」が、一体どうつながっているのか。「人新世の『資本論』」などの著書で知られる気鋭の経済思想家が、ウクライナ侵攻を読み解いた。【聞き手・野口麗子】

インフレで庶民の不満増幅

 ――ロシアのウクライナ侵攻によって、気候変動対策にどのような影響が出ているのでしょうか。

 ◆言うまでもなく、世界中の関心は「将来の危機であるような気がする」気候変動よりも、目の前の戦況に集まっています。戦争の結果のインフレ、とりわけ食料価格とエネルギー価格の高騰が私たちの生活に重くのしかかる結果、物価の安定を望む声が強くなっているのも当然です。

 問題は、気候変動が「将来の危機」ではなく、今すぐ対処しなくてはならない危機だということです。この点を軽視すれば、短期的な最善策に見えるものが、長期的にはより深刻な危機を生むことになります。

 どういうことかというと、ウクライナ侵攻のせいで、エネルギー価格が高騰すれば、原油や天然ガスを増産しようということになりますよね。アメリカは欧州連合(EU)向けの天然ガスを輸出しようとしていますし、イギリスはロシアに制裁を科した一方で、ジョンソン首相が3月にサウジアラビアで会談をして原油増産を要請したわけです。

 サウジアラビアは独裁国家です。いわばロシアという独裁国家をやっつけるために欧米が別の独裁国家を支援する、といった状況になっていく。これまで、欧米がプーチン露大統領を優遇してきた結果が今回の戦争なわけで、何も学んでいないと言わざるを得ない。もちろん、気候変動も止まりません。

「化石燃料」と「独裁政権」の親和性

 ――化石燃料を増産し、気候変動が進んでいくとどうなりますか。

 ◆国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書にもあるように、気候変動が進んでいけば、食料危機や水不足の問題が起きると同時に、資源や難民問題を巡って、今回のような戦争や紛争が起きるリスクが世界的に高まります。

 今、私たちは全精力を集中してウクライナ危機に対処していますが、結局、化石燃料増産となり、ロシアとは別の独裁政権を支持するといった話になれば、リスクは増していく。つまり、これが最後の戦争ではないということです。

 ――化石燃料と独裁的な政権の関係性を切り離す必要があるということでしょうか。

 ◆化石燃料と独裁政権というのは非常に親和性が高い。化石燃料のインフラが非常に中央集権的だからです。化石燃料を使い続けるという選択は、ロシアやサウジアラビアのような独裁的な政権の力を維持し、支えることにつながってしまうということです。

気候変動で苦しむロシア

 ――化石燃料に依存するロシアにとって、世界的な脱炭素の流れは苦しいですね。

 ◆そうです。化石燃料を使いながら自分たちの経済を成長させ、それで権力を安定させていくやり方に依存している以上、脱炭素の流れは脅威です。プーチン氏にとっては外貨を稼ぐ手段が失われ、自らの権力基盤が揺らいでいくことになる。そうした意味でも、ウクライナを侵略するラストチャンスだったと思います。

 一方、ロシ…

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【ウクライナ侵攻】

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