連載

拡張する脳

脳とコンピューターを「融合」させる技術の実用化が国内外で目覚ましく発展しています。その研究現場や課題を伝えます

連載一覧

拡張する脳

脳波を読み取り文字入力 ALS患者に治験 阪大が計画 /2

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
埋め込み型BMIの脳波計=大阪府吹田市で3月、大西達也撮影
埋め込み型BMIの脳波計=大阪府吹田市で3月、大西達也撮影

 全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)」(ALS)の患者の頭部に、小型の脳波計を埋め込んで文字入力につなげる治験を、大阪大の研究チームが計画している。ALS患者は症状が進行すると、意識は鮮明なのに周囲とコミュニケーションが取れなくなることがあり、こうした患者が自分の意思を伝える手段になると期待される。【池田知広】

連載「拡張する脳」第1部(全9回)は以下のラインアップでお届けします。
第1回 ALS患者「愛していると伝えたい」
第2回 脳波で文字入力 阪大が治験計画
第3回 頭でイメージ まひの指動いた
第4回 開発競争「バチバチの戦い」
第5回 「心」は診断できるか
第6回 光よ再び 人工網膜の可能性
第7回 肉体の限界を超える
第8回 負の歴史 直視を
第9回 舩後参院議員に聞く

体内埋め込み型、国内初

 阪大病院の治験審査委員会が審査中で、承認を得られれば、少数の患者を対象に今年中にも半年間にわたる治験を始める。

 脳と機械をつないで情報を入出力する技術はブレーン・マシン・インターフェース(BMI)と呼ばれ、近年は医療やビジネスへの応用に注目が集まっている。ALS患者を対象にした機器は既にあるが、いずれも体の外から脳の情報を読み取っていた。より精度良く計測できる体内埋め込み型の意思伝達機器を使った治験は、国内で初めて。

 阪大の平田雅之・特任教授(脳機能診断再建学)によると、脳波計の大きさは3センチ×4センチ程度。頭蓋骨(ずがいこつ)の一部を手術で外して、脳の表面に脳波計の電極を置く。脳波計は体を動かそうとする時に脳の運動野から出る高周波の脳波を測り、体外のコンピューターに無線で伝える。

 脳波計を埋め込んだ患者には、手を握るイメージをしてもらう。その時に出る脳波のパターンを人工知能に学習させ、手を握ろうとしているのかどうかを判定できるようにしておく。

 文字入力には、既存の意思伝達装置を組み合わせる。この装置はモニター上に50音表を「あ行」から順送りしながら表示する。そこで、選びたい文字が選択されている時に合わせて手を握ろうと念じれば、希望する文字が打てる仕組みだ。脳波計はワイヤレスで、ヘッドホンのような装置を身につけることで電力が供給される。

 まずは半年間にわたって経過を観察し、患者が希望すれば、それ以降も在宅で利用できるようにする。5年間程度は続けて使える見込みという。将来的にはパソコンや電動車椅子などの操作も目指す。

研究チーム「非常に大きな技術」

 ALSは運動をつかさどる脳内の神経に障害をきたす難病で、機能を改善させる有効な治療法は確立されていない。重症の患者は、わずかに動く筋肉や眼球の動…

この記事は有料記事です。

残り390文字(全文1560文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集