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指先のエロス

全盲の落語家・桂福点さんが、魅惑の世界を「指先」案内します。

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指先のエロス

乗って触れたあの隙間 五感を刺激、趣味の王道=桂福点

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イラスト=まどさん
イラスト=まどさん

 私には、もう一度、指を差し入れたい場所がある。しかしその願いはかなわない。それはもう、この世には存在していないからだ。今でもあの色のコントラストを思い浮かべると耳がほてり、体全体が鼓動を打ち始める。

 私が見えていたころの大切な色彩の記憶の一つである。小豆のアイスバーを左右に割ったような色と形をしたあの部分。それが同じ力の割合で接し合っている、黒くて弾力を持った場所。そう、阪急電鉄の今はなき2100系のドアの割れ目なのだ。

 小豆色をした左右の扉が接しているゴムの部分。特にこれが忘れられまへん。他の車両とはひと味違う。直接ドアとゴムがついているような感じで、黒のような灰色のような色合いをしている。左右のドアの接点は、全く隙間(すきま)などないように見えるが、子どもでも、指先を適切なポイントに当て、ドリルのようにクリクリ回せば、挿入できちゃったのだ。一見、強情な硬さを思わせるが、その実ソフトで、指を入れてしまうと、ちょ…

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