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岸田文雄首相が、訪日外国人観光客の受け入れを6月10日から再開すると表明した。
新型コロナウイルス禍で2020年春に入国を禁止して以来、約2年ぶりとなる。インバウンドの復活に向けて一歩踏み出す形だが、感染拡大防止の観点から慎重に進める必要がある。
政府は今春に入って、ビジネス関係者や留学生などを対象に外国人の入国制限を緩和してきた。欧米やアジアなど多くの国々は既に観光客も受け入れている。
19年は訪日客が3188万人に上り、関連の消費額は4・8兆円に達していた。コロナ下で業績不振に陥った観光業界の要望を受け、政府は国内の感染状況が落ち着いていることも踏まえて再開を決めた。
欧米や中国、韓国、台湾など、感染リスクが低い98カ国・地域が対象で、当面は添乗員付きのツアー客に限定する。
日本人を含む1日当たりの入国者数の上限を2万人とし、この枠内で観光客も受け入れる。出国前の検査を引き続き求めるが、入国時は免除する。
まず政府に求められるのは、内外の感染状況を注視し、臨機応変に対応することだ。重症化が懸念される新たな変異株が海外で発生した場合などには、制限の再強化もためらうべきではない。
観光庁は今週、米国など4カ国からツアー客を受け入れる実証事業を始めた。感染対策や、陽性者が出た場合の対応などを検証し、観光業者向けのガイドラインをまとめる。内容を周知徹底し、随時更新することが欠かせない。
人の多い屋内や電車内でのマスク着用など、日本の感染防止対策を訪日客に理解してもらう必要がある。
首相は「感染状況を見ながら、段階的に平時同様の受け入れを目指す」との考えを示している。
コロナ前に政府は「観光立国」を掲げ、20年に訪日客4000万人を目指したが、頓挫した。
最近は円安で海外からの日本旅行は割安になっている。与党内で訪日客への期待が高まっているが、拙速な対応は控えるべきだ。
インバウンドの復活を優先するあまり、コロナ対策がおろそかになっては本末転倒だ。